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METライブビューイング「ハムレット」 [オペラ(音源・映像・その他)]

METから世界中の映画館に生中継された3月27日の「ハムレット」公演が、ようやく日本でも10日(土)から公開になりましたので、早速見てきました。16日(金)まで1週間に渡って日本各地の映画館で上演されます。上映館や上演時間情報は松竹のMETライブビューイングページでご確認ください。




この日の上演での序曲のホルンのソロとその後のファンファーレのまずさについては既にラジオ中継で聞いて分かっていましたが、映像つきで聴くと更にずっこけそうになりますね(^_^;)しかも、冒頭の戴冠式の合唱の後にソロで歌うクローディアス役のジェームズ・モリス(James Morris)の歌唱がまた、音をとるのを諦めたような、歌っているのか語っているのかすら分からない歌唱で悪い意味で驚かせてくれますし…。映像で見ればあまり気にならないかもしれない、と思っていたのですが、やっぱり気になってしまいました。ヴォータンなどでの素晴らしい歌唱の印象が残っているから、余計に違和感があるんですよねぇ。

Hamlet [DVD] [Import]そんな感じで出だしはちょっと凸凹がありましたが、その後場面が変わってハムレットが登場してからは、サイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)が気合の入った演技と歌唱でそんな「つまづき」を忘れさせてくれました。今回と同じ演出(最期は別バージョン)のDVD(左写真からamazonにリンク)は何度も見ていますが、今回の公演の方が断然深い解釈に基づいた役作りをしています。(まあ、DVDの収録の時はその2時間前にバスに轢かれた(!)らしいので、体調があまりよくなかったのかもしれませんが)やっぱりキーンリーサイドのハムレットははまり役ですねぇ~。これが日本にいながら楽しめるなんて、METには感謝、感謝です。「ハムレット」はアリアというよりもセリフを語るような歌唱部分が多いオペラなので、詳細な役作りとか演技力とか表現力といったキーンリーサイドの長所が生きるんでしょうね。シェイクスピアの原作からあちこちカットされているとはいえ、有名なセリフなんかはきちんと入っているので、そういう見せ場を流してしまわずにしっかり表現してくれているのも、演劇ファンとしては嬉しい限りです。特に第2幕のクローディアスとガートルードとの会話のシーンでの、ハムレットの隠し切れない叔父への怒りとそれを取り繕うかのようなおどけっぷりが大好きなのですが、今回のバージョンも堪能させてもらいました。特に、クローディアスに「わが息子よ」と声をかけられて「私の名前は(あなたが殺した先王と同じ)ハムレットです!」とあてつけるところはカメラワークもなかなか上手くて緊迫感がありました。…って、ここは後に続く有名な酒飲みアリアへのつなぎの場面なので、オペラとしては全然聴かせ所ではないんですけどね(^_^;)勿論、こういう「演じる」場面だけでなく、「歌う」場面も初日のような「頑張って大声をだしている」雰囲気は無く、絶好調に近い歌唱だったと思います。これはぜひDVDにもしてほしいものです!

今回評価が分かれているマーリス・ペーターセン(Marlis Petersen)のオフェーリアですが、声だけよりも演技つきで聴く方が断然好印象でした。かなり朗らかな、さばさばした感じの役作りなので所謂シェイクスピアのオフェーリアのイメージとはちょっと違うとは思いましたが、ハムレットへの愛情の深さと狂気に至るまでの心の動きは歌唱にしっかり出ていたと思います。狂乱の場は、高音が時々かすれ気味でしたけどオフェーリアの狂気、悲しみについてはしっかり伝わってきました。欲を言えば、もうちょっと神経的にか弱い感じが出ると良かったかなぁ~とは思いますが、私は彼女のオフェーリア嫌いじゃないです。

それから、実は今回映像で見るのを一番楽しみにしていたチョイ役のレアティーズを歌ったトビー・スペンス(Toby Spence)ですが、登場シーンからいきなりどアップで画面に登場してくれました。(心の中で「キャー、トビー☆」と叫んだりして^^)ラジオ音源で聴いたときはちょっと力んでいるように思いましたが、映像つきだとその力みが熱血漢レアティーズらしくて良かったです。キーンリーサイドのハムレット像にも言えることですが、やはりシェイクスピアに親しんでいるとオペラとはいえ演じる役柄に深みが出るものですね。オペラでのレアティーズの登場時間なんて合計10分にもならないと思いますが、イメージもぴったりだったし、しっかりとした存在感がありました。

ガートルード役のジェニファー・ラーモア(Jennifer Larmore)は、メゾなのにキンキンした響きがあり、あまり好きな声質ではありませんでした。ガートルード役としても、説得力に欠ける役作りで、単に自己中心的な面ばかり強調されてしまって深みが無くて残念でした。時々演技の一環で見せている(と思われる)渋顔も、折角の美人が台無しです。ガートルードはマクベス夫人じゃないんですけどねぇ…。全体として見れば脇役に至るまでしっかりとキャスティングされていたとは思いますが、歌えないクローディアスとヒステリックすぎるガートルードには不満が残りました。

さて、冒頭はこけさせてくれたオーケストラですが、基本的な演奏技術には文句はありませんし、ルイ・ラングレ(Louis Langree)の指揮もとても魅力的だったと思います。DVDになっているリセウ歌劇場の公演ではド・ビリー指揮なのですが、私はラングレの指揮の方が断然好みです。各楽器の収録音量のバランスも良くて、新鮮に感じる部分も多かったです。今までも結構好きなオペラでしたけど、この演奏を聴いて、更にお気に入りオペラリストの上位に入ってくることになりそうです。

ちなみに、この日の公演もご覧になったMadokakipさんが、以前ご紹介した初日レポートに負けない充実した公演レポートをアップしてくださっていますのでご紹介します。

◆Opera!Opera!Opera!: HAMLET (Sat Mtn, Mar 27, 2010)
◆Opera!Opera!Opera!: HAMLET (Tues, Mar 16, 2010)(こちらは初日レポート)


初体験のライブビューイング、アメリカやヨーロッパのライブ中継時の評判がかなり良かったのでかなり楽しみにしていたのですが、その期待を裏切らない非常にレベルの高い公演でした。中継技術も、画質はほぼ予想通りのレベルだったものの、音の臨場感の方は素晴らしくて、行ったことのないMETの大きな劇場空間をちょっとだけ疑似体験できたかな~と思います。ただ、カメラワークに関しては、私の天敵(笑)映像監督ブライアン・ラージのお得意などアップ映像が相変わらず多用されすぎていて、「もっと舞台全体をみせてくれ~」とか、「ここは2人を一度に見たいよ~」という具合にストレスがたまりました。時々カメラワークもおかしい時がありましたしね。それでも、高いと思っていた3,500円もまあ妥当かと思わせるクオリティではありましたので、まだライブビューイングを体験されていないオペラファンの方には、この「ハムレット」はかなりお勧めの公演です。

ところで、今回の司会はおなじみルネ・フレミング(Rene Fleming)。ショッキングピンクのジャケットで登場したのにはビックリしましたが、似合っていないわけではないですね。休憩時間のインタビューで、白シャツが赤ワインまみれのキーンリーサイドに「私たち、カラーコーディネートしたみたいね」なんてジョーク飛ばしていましたが、キーンリーサイドは「いやあ、君のが素敵だよ」なんて返してました。このワインのしずくを滴らせながらのインタビューはなかなか充実した内容だったのですが、ライブビューイング映像ではラジオ音源ではカットされていた、幕が下りてからインタビューが始まるまでのワインまみれキーンリーサイドの動きも追いかけていて、これがなかなか面白かったです。まず、舞台上でバスマットのように敷いたタオルの上で飛び跳ねて靴のワインをぬぐい(映画館内で笑いがおきてました^^)、その後頭や顔をタオルで拭きながら舞台裏を通り抜けて反対側の袖にいるフレミングの場所まで移動し、「ルネ、キスしようか!?」とジョークを飛ばしていたんですね。これに対してフレミングが「あはは、そうねサイモン、ハグしましょ!」とジョークを返したところからはラジオでも放送されたとおりです。こういう楽しい「おまけ」も、ライブビューイングのお楽しみ要素なんですね。
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Kew Gardens

私も、早速初日にみてきました。 音だけでは見えない表情や、舞台の様子がみえるので、HDライブビューイングにはホント感謝! ですね。 keenlysideがDVD収録時よりさらに深く役柄をほりさげているのがわかり、フレミングの感想に全く同感です。 そしてラジオではカットされていたインタビュー直前の映像と、フレミングとのやりとりは嬉しいおまけでした。 普通このインタビューでは、直前の舞台とはうってかわって、笑顔でおどけてレスする人たちが多いのに、まじめに語っていたKeenlysideは、役になりきりすぎではと思っていました。 でも、違いましたね。 それにしてもあそこまでワインまみれだったとは。 やはりライブビューイングということで力がはいっていたのでしょうか。 それから、ガートルードのあのかつらは、ちょっと普通に変更されたんですね。 初日は欧州版と同じだったようですが、あれでは怖すぎ。 是非DVD化してほしいです。
by Kew Gardens (2010-04-12 07:41) 

Madokakip

こんにちは!いよいよ日本でのHDがスタートですね!
それにしても、あのワイン浴びのシーンの直後にインタビューがあったんですか!?
なんとまあ、、キーンリーサイド、大変でしたね、それは、、(涙)

この公演を見て、この作品、そんなにつまらなくなんかないと私も思いましたし、
同じご意見を私のブログでも頂いて嬉しい限りなんですが、、
それはこれがとてもいい公演だったからじゃないかと思うんですよね。
もし、オケがへなちょこで、そして何よりハムレット役がキーンリーサイドでなかったなら、
同じ位に悪くない作品だと思えたたかどうか、かなり微妙です。
私も同じく、ラングレの指揮、全然悪くないと思いました。初日でブーを出した人の気がしれません。
来シーズン、彼はポーザでHD再登場ですね。私も楽しみです。

by Madokakip (2010-04-13 05:07) 

momo

私も初日に気合を入れて見てきました。音が劇場で聴くよりずっと大きいのでちょっと疲れるんですが、近所で手軽に見れるのが何といっても気に入ってます。

リセウのと同じ演出なんですね。衣装も同じ人なんでしょうね。舞台セットは殆ど同じでしたよね。でもカメラワークが全然違って、今回のブライアン・ラージのは大写しが多かったんですよね。私はキーンリサイドがドアップで見れて満足しました。ついつい行かないでおこうと思っていたROHの椿姫を買っちゃったくらい、、(^0^;;)。

生の声を聞いた事ないので、声の事はよく判りませんが、ホーレイショーになってたライアム・ボナーは若くて背が高くて、、、tall,dark,handsomeを絵に描いたような人でしたね。
by momo (2010-04-13 15:39) 

Sardanapalus

Kew Gardensさん>
>早速初日にみてきました
やっぱり初日に行ってしまいますよね♪休日に早起きして見に行ったた甲斐がありました~(^^)期待に違わない、全体的にレベルの高い公演だったと思います。おまけ映像も楽しかったですし。ぜひDVDにしてほしいです。

>ガートルードのあのかつらは、ちょっと普通に変更された
私も、彼女が最初に登場したときに「あ、カツラが違う」と思いました。あれはあれでガートルードっぽいとは思いますが、ラーモアにはライブビューイングの時のカツラの方がいいですね。
by Sardanapalus (2010-04-13 21:26) 

Sardanapalus

Madokakipさん>
またまた素晴らしい公演レポートをありがとうございます。しっかりリンクさせていただいています!

>あのワイン浴びのシーンの直後にインタビューがあったんですか!?
そうなんですよ。「この後ルネとのインタビューがあります」って言われて「うん、分かった。大丈夫だよ」と顔を拭きながら答えていましたけど、大丈夫じゃないですよね…。ファンとしてはネタが増えて楽しいですけど(^_^;)

>オケがへなちょこで、そして何よりハムレット役がキーンリーサイドでなかったなら、同じ位に悪くない作品だと思えたたかどうか、かなり微妙
そういえば、私も最初にこのオペラをテレビで見たとき「何てつまらないオペラなんだ、やっぱりハムレットは演劇でないと!」なんて思ったのを思い出しました!その後、キーンリーサイドのハムレットの映像を見て目から鱗が落ちたんですが、やっぱり音楽的にはダレるところもありますね。そういえば、私の隣のおじさんは、上演中ぐうぐう眠ってました(^^)

>来シーズン、彼はポーザでHD再登場
同じ演出のROHのテレビ中継映像を既に見ているのでどんなポーザになるかだいたい予想は出来ますが、それでも楽しみです。ついでに、アラーニャのイタリア語版カルロは聴いたことが無いので、そちらも結構気になっています。
by Sardanapalus (2010-04-13 21:40) 

Sardanapalus

momoさん>
>私も初日に気合を入れて見てきました
わ、momoさんも初日に行かれたのですか!近くに上映館があるというのは羨ましいですー。

>キーンリサイドがドアップで見れて満足
あ、勿論私もキーンリーサイドの演技の細かいところまで見えて満足でしたよ(^^)でも、ラージのカメラ割りはアップを多用しすぎていて舞台全体が把握できないので好きじゃないんです。

>ホーレイショーになってたライアム・ボナーは若くて背が高くて
ホレイショーとマーセラスはカッコイイ2人組でしたよね!今後注目してしまいそうです(^^)
by Sardanapalus (2010-04-13 21:49) 

Sheva

Sardanapalus さま、おはようございます!
私は昨夜見てきました~
はあ~ やっぱサイモン、すごいわ~
だってリセウだって相当スゴイでしょ?
それなのにそれと違う演技してましたよいろいろ。
サイモンすごい~
とても平常心では見られないです…
しばらくとりつかれそう。
打ちのめされて落ち込みそう
Sardanaさまはビリーバッドとか生で見てますもんね~
もううらやましすぎですよお。

Madokakipさまのサイトいつも拝見させていただいてます。
本当にすばらしくて詳しくて(しかも笑えて)いつもびっくりしています。
METの情報がオンタイムで入ってくるので、NYにすごい日本人がいていただいてよかった!と思っています
今後ともぜひすてきな記事をUpしてくださいませ
お願いいたします!
by Sheva (2010-04-15 09:23) 

Sardanapalus

Shevaさん>
>はあ~ やっぱサイモン、すごいわ~
本当、このハムレットはすごかったですね!映像でしたけど、キーンリーサイドの本気の歌唱と演技を堪能しました。今週は、このハムレットを脳内で繰り返し上演しちゃいましたよ♪

Madokakipさんのブログ、本当に毎回読み応えのある記事で素晴らしいですよね~。おそらく次の記事で読める「アルミーダ」の感想も楽しみです!
by Sardanapalus (2010-04-18 20:09) 

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