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オペラ「ドン・ジョヴァンニ」@ROH②:音楽・歌手編 [オペラ(実演)]

①の方では演出に関して書きましたので、②では歌手や音楽について書いていきたいと思います。

今回は4回見に行くことが出来ましたが、一番出来がよかったのは15日で、以下僅差で18日>12日>>10日という印象です。とりあえず、10日は指揮者もオーケストラも歌手もお疲れモードで、本来初日だったとは思えないような出来でした。序曲から既に分解しそうなオーケストラは歌手ともタイミングが合わず、終始まとまりのない演奏。アンナは事前にアナウンスをするくらい調子が悪かったし、ジョヴァンニも声が出ない分を演技でカバーといった感じだし、エルヴィーラは晩餐の場面で出トチるし、他のキャストも重唱がずれずれだし、しかも地獄落ちで巨大な手に炎がつかないハプニングもあって、あらら~このキャスティングでこんな程度ですか、というがっかりの公演日でした。私はこの日は最前列だったのでまだ演出の細かい部分を楽しめましたが、後方の席にいたらどうだったでしょうねぇ。その後は、DVD映像収録日の12日の公演で大分持ち直し、2日休みを挟んだ15日は、オーケストラも歌手もノリノリで大満足!この日は10日の出来とは天地の差でした(^_^;)最終日の18日は、15日と同じくらい楽しませてもらいましたが、歌手達の演技が15日の方が好みだったので2番目にしました。初日だけで帰るようなスケジュールにしなくてよかった~。ということで、以下本題に入ります。




まずは音楽全体の印象ですが、マッケラスの指揮は相変わらずテンポ良く進み、82歳という年齢を全く感じさせません。しかも、ただ勢いがあるというだけではなく、ゆっくり聞かせて欲しいところはじっくりと美しくオーケストラを導いていて変幻自在でした。オーケストラの金管楽器とティンパニは古楽器を使っていましたが、演奏スタイルは古典風というわけではありません。本人曰く、古楽器の方が音は小さいけれど鋭く響くので弦楽器とのバランスが良いという理由で使ったそうです。問題点があるとすれば、あまり上手でないロイヤルオペラのオーケストラで古楽器を使うと、音程が狂い易いということです(^_^;)明らかに大外しということはなかったですが、所々で金管の音程が怪しくなっていたのが気になりました。でも、トランペットやホルンが管を変える場面とか、結構大忙しで見ていて楽しかったですけど。

また、チェンバロ奏者とチェロ独奏者も歌手達をしっかり支えていたと思います。特にチェロ独奏のクリストファー・ヴァンデルスパー(Christopher Vanderspar)は綺麗なメロディーを聞かせてくれましたが、座る場所によってはツェルリーナの「ぶってよ、マゼット」のチェロ伴奏が大きく響きすぎて、歌手の声がよく聞こえないところもありました(その辺りに座っている観客が揃ってオケピットを覗き込んでいる姿が可笑しかったです^^)。そうそう、私は今回始めてチェンバロが序曲に参加していることを知りました!あまりに驚いたので序曲の間中注目してしまいましたよ。

さて、続いて歌手についてです。とりあえず書いてみますが、ストリーミング映像を見て思い出したら追記するかもしれません(^^)
●ドン・ジョヴァンニ:サイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)
やはり、私の理想のジョヴァンニに一番近い、細かい心理描写の見えてくるジョヴァンニです。毎回違う演技をしてくれるので、全く飽きることなく4回楽しむことが出来ました。10日は悪かった声の調子は最後まで絶好調とはいかなかったと思いますが、アリアの少ないジョヴァンニですから、感情表現豊かなレチタティーヴォをたっぷり聴けただけでも嬉しかったです。それに、女性をくどく場面は相変わらず魅力的でしたしね(^_^*)"Andiam!"なんて言いながら、ツェルリーナの手を避け続けて焦らすところなんて、そりゃツェルリーナから行きまっせ!全く悪い男だ!(気になる方は、このムービーで見られます)とにかく、表面上は自由奔放な人生を楽しんでいるように見えても、常に誰にも理解されない暗部を心の底に持っているような陰のあるジョヴァンニといえば、今のところキーンリーサイドが一番だと思いますね。それと、今回も良く動いてました。壁をよじ登ったりぶら下がったり、飛んだりまわったり階段を駆け上がったり、あんな衣装でよくあれだけ動けるものです。それにしても、ストリーミングの映像では面白い場面がいくつか見れなくて残念です。たとえば、エルヴィーラが登場してきて歌っている間髪の毛や服をあちこちレポレッロに調えさせたり、ツェルリーナとの間をエルヴィーラに邪魔されて「悪魔から離れなさい」と言われている場面で「そんな男じゃないよ~」とマリア様に祈る姿勢をとってみたり、いっぱい笑わせてもらいました!唯一の難点は、少し太ったことですかね。裸になるならもう少しお腹周りをシェイプアップして欲しいなぁ~。

●レポレッロ:カイル・ケテルセン(Kyle Ketelsen)
実は、数年前に彼のレポレッロをPROMSのコンサートで聴いたときからいつか舞台で見たいな~と思い続けていたので、今回念願がかなって嬉しかったです。しかも、期待を裏切らない面白さ!歌も手堅くて声量もたっぷりですし、何よりコメディ演技が上手いのなんの。キーンリーサイドの毎回変わる演技にしっかり対応してました。2人して毎回楽しそうだったなぁ(笑)特に、ジョヴァンニのふりをしてエルヴィーラをくどく場面では壁を登り損ねてずっこけたり、ジョヴァンニの真似をして指のスナップで指示を出したり、調子に乗ってエルヴィーラのガウンをバッサバッサ振ってみたり、とにかく毎回大笑いさせてもらいました。ジョヴァンニも毎回大うけしてましたけどね(^^)ストリーミング画像でも十分楽しませてくれます。

●ドン・オッターヴィオ:ラモン・ヴァルガス(Ramon Vargas)/ロバート・マレー(Robert Murray)
4回のうち2回はヴァルガス、2回はマレーだったオッターヴィオですが、この2人はほぼ正反対の役作りをしていました。どちらかと言うとマレーは正統派の優男オッターヴィオで、一方のヴァルガスは珍しくも頼れるタイプ。個人的に、なよっちいオッターヴィオに飽き飽きしている身としては、ヴァルガスのオッターヴィオが気に入りました。歌の方でも、ヴァリアンテがなかなかかっこよくて好印象でした。演技は上手いとは言えませんでしたが、少なくとも騎士長がアンナの許婚に選ぶだけの資質はありそうでした。

●マゼット:ロバート・グリアドウ(Robert Gleadow)
ROHのヤング・アーティストだった頃に何度も聴いて大好きだった若いバス歌手ですが、今回は久しぶりに声が聴けて幸せでした。まだ25歳とかその辺ですが、演技も上手いし声もなかなかいいと思うので、一歩ずつキャリアを積んでいっていつか主役級を歌って欲しい歌手です。長身に刺青(収録日はメイクで消していました)のワイルドなマゼットで、ジョヴァンニにも遠慮なく敵対心ばりばりです。そしてやられっぷりも上手い(笑)ツェルリーナとはけんかするほど何とやらで、仲直りするとすぐいちゃいちゃしていました。

●騎士長:エリック・ハーフヴァーソン(Eric Halfvason)
彼が騎士長なら文句なしです。だって低音が響くから(^^)最初と最後しか出てきませんが、「ドン・ジョヴァンニ」全公演と「西部の娘」を掛け持ちしながらのハードスケジュールの中、しっかりと役をこなしていました。最後の地獄落ちの場面は、映像だとイマイチ伝わりませんが舞台上が火の海状態の中、微動だにしないのには感心してしまいました。

●ドンナ・エルヴィーラ:ジョイス・ディドナート(Joyce DiDonato)
第1幕では怒りっぱなしでヒステリックですが、2幕の変装したレポレッロに騙されてついていく場面では「女」になり、ジョヴァンニが殺人者であることを知っても見限れない自分の想いに揺れる"Mi tradi"では聴いているこちらもウルウルっときてしまうくらい苦しみが伝わってきました。強がっていたけれど、本当は弱い部分もある可愛らしいエルヴィーラなんですね。1幕でレポレッロからカタログをくすねると、それをジョヴァンニに見せながら「あなたの悪行の証拠があるのよ!」と脅してジョヴァンニを慌てさせる場面なんかは応援したくなっちゃいました(^^)今回の公演の個人的目玉2人目の彼女は、実はこれがロールデビュー。彼女のブログ上には何度も「やれるかわからないけどがんばるわ!」なんて記事が投稿されていて、こちらもドキドキしながら初日を迎えました。しかしそこはプロですから、登場の場面でちょっとオケと合わないところがあったにせよ、歌唱自体は難しいアリアも難なくこなして大喝采を浴びていました。本当、"Mi tradi"をこんなに感情をこめて歌えるエルヴィーラはなかなかいませんよ。10日はちょっとミスした部分もありましたが、実際に聞いた中では、文句なしで1番のエルヴィーラでした。ただ、何故かフィナーレの合唱の出だしで、普通はツェルリーナが歌うパートを歌っていたのですが、そういう場合もあるのでしょうか?単に声域の関係で変えたのかしら?それとも演出意図があってのこと?ご存知の方がいらっしゃったら教えてください。

●ドンナ・アンナ:マリナ・ポプラフスカヤ(Marina Poplavskaya)
元ROHのヤング・アーティストだった彼女は、ロンドン在住時に何度か聞きましたが、私の好みとは正反対の声でどうにも苦手でした。しかも今回は映画館で見た8日と10日のどちらも調子が悪くて高音がとっても苦しそう(>_<)ストリーミングの動画でも"Non mi dir"の後半が特に厳しいですね。ただ、15日や18日になってくると声の調子も取り戻し、気品のある演技は上手いのでアンナとしては合格点だったと思います。毎回これ位歌ってくれれば苦手にならずに済むんですけどね…。

●ツェルリーナ:ミア・ペルション(Miah Persson)
ツェルリーナに良く似合っていたし、マゼットとの見た目のつりあいもよかったです。とても可愛らしいツェルリーナでしたが、芯はとても強くて母性愛に溢れていました。傷心のエルヴィーラにも、ジョヴァンニが地獄落ちしてショックを受けているレポレッロにも、彼女が真っ先に慰めにいってあげます。マゼットは良いお嫁さんを選びましたねぇ。彼女の歌声は元々ハスキーだとおもいますが、ときどきかすれ気味なところがあったのが残念です。

◆カーテンコール写真◆



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コメント 10

keyaki

>ラモン・ヴァルガス(Ramon Vargas)
のオッターヴィオですか。めずらしくないですか?あちこちで主役をはっている彼には役不足(正しい意味の方です)のような気がしますが。DVD用なのかしら?

>レポレッロ:カイル・ケテルセン(Kyle Ketelsen)
忘れもしない、れいの「玉突き型キャスト変更」の彼ですね。(笑
その後、このチャンスをものにして順調なようですね。年末にはバルセロナでフィガロ、2010年にはエクス音楽祭でレポレッロを歌う予定のようです。
この時の「玉突き型キャスト変更」で、彼の代役をつとめたヴィノグラドフもロンドンでコリーネなんですね。2回目があるということはその劇場では評価されているということでしょう.....
ところで、彼の事務所のバイオの最後にどう解釈していいのか分からないセンテンスが、ちなみにズヴェトラーナ・ネステレンコ女史は、モスクワの声楽教師で、彼も習ったことがあるようです。
ヴィノグラドフ公認サイト《彼のお部屋》にも行ってみましたが、このことについてはなにも書かれていませんので、ここは英語に強いSardanapalus さんの解釈をお願いしたいと思います。つまり、これがここに書かれている意味です。"He continues to work with "って、どういう意味かしら。
http://www.askonasholt.co.uk/green/green/home.nsf/ArtistDetails/Alexander%20Vinogradov
私も、少なからず気にかけている歌手ですので、気になりますので、よろしく。
by keyaki (2008-10-06 08:56) 

babyfairy

結局、4回もご覧になったんですね。素晴らしい。
私はいつも1回しか観ないんですが、それだと調子のいい日に当るとは限らず、最近は外れが多いです(特に王子関係。去年のペーザロの初日は王子だけが素晴らしくその他キャストは↓だったし、今年の初日もシラグーザやガナッシは良かったけどピッロのクンデが未だエンジン前回とは言えなかった)。

ジョイス・ディドナートが頑張っていたそうで、良かった、良かった。
私も彼女は結構好きなのです^^
by babyfairy (2008-10-06 10:29) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>>ラモン・ヴァルガス(Ramon Vargas)
>のオッターヴィオですか。めずらしくないですか?
とても珍しいと思います。仰るとおり役不足ですが、彼くらい実力のある歌手が歌うオッターヴィオの2つのアリアはとても新鮮でした。こんなに良い曲だったっけ?なんて思ったりして(^^)

>>レポレッロ:カイル・ケテルセン(Kyle Ketelsen)
>忘れもしない、れいの「玉突き型キャスト変更」の彼
そうですそうです、彼です。ROHでは数年前からフィガロやレポレッロの他、珍しいオペラで手堅い歌唱を聞かせてくれています。

>ヴィノグラドフもロンドンでコリーネ
そう、昨年に続いて登場です。聴衆の評判もいいようですよ。もっと休暇が取れる身分ならこのボエームも聴きたかったです(T_T)

>"He continues to work with "って、どういう意味かしら。
この場合は、ネステレンコ女史の指導(というかレッスン?)を受け続けている、という意味ですね。プロになっても声のコンディションを整えるために、専門家に定期的に聞いてもらってアドヴァイスを受ける歌手も多いそうですから、そういうことだと思います。勉強熱心なんですね。私もはやく聴きたいなぁ。
by Sardanapalus (2008-10-06 20:54) 

Sardanapalus

babyfairyさん>
>いつも1回しか観ないんですが、それだと調子のいい日に当るとは限らず
オペラに限らず、気に入っている演目は複数回見ないと気がすみません(^^)それに、外れの日だけ見てかえるなんて、悲しすぎますもの。勿論、それだけの暇があるということですけど。

>ジョイス・ディドナートが頑張っていたそうで、良かった、良かった。
はい、とっても頑張っていました!既にストリーミングで見れるようになっていますので、ぜひ聴いてあげてください♪見せ場の2幕のアリア"Mi tradi"はpart8↓の最後です。
http://www.roh.org.uk/video/index.html?bcpid=1733261711&bclid=1780606125&bctid=1813507352
by Sardanapalus (2008-10-06 21:07) 

keyaki

Sardanapalusさん、
work は仕事じゃなくて、お勉強なんですね。
でも、オペラ歌手は、みなさんそれぞれデビュー後も先生の一人や二人いるのが一般的で、わざわざそれを書く理由が謎です。それに、ずっと継続的に指導を受けているんだったら、なんで今頃急にあそこに書いたかですが、一時的にでも勉強に専念するということかしら。ギャンビルみたいにレパートリーをがらっと変えるとか、ポラスキーのように不調から脱出をはかるために舞台を一時中断するとかかしら。私が気にしても仕方がないですけど.....まあ、いずれ分かるでしょう...
いつも、ありがとうございます。

by keyaki (2008-10-07 00:59) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>わざわざそれを書く理由が謎
推測するしかないですが、歌手が感謝の意も込めて載せたいと思ったとか、どこでレッスンを受けているのかという問い合わせがあったとか、そういう類の理由だと思いますけどね。これくらいのお手伝いならいつでもどうぞ~(^^)

by Sardanapalus (2008-10-08 00:07) 

しま

あらら、サイモン太っちゃったんですか? と言っても、私の目から見れば「マダマダ細い」部類かもしれません(笑) すみません、変なところに反応して。

それから、ヴァルガスのオッターヴィオに興味津々。頼れそうなオッターヴィオなんてなかなか無いですもんね!!

>演技は上手いとは言えませんでしたが

周囲が演技派ですから、辛いですねぇ。でも私は大根ちっくなヴァルガスが可愛くて好き。

>ハーフヴァーソン
>舞台上が火の海状態の中、微動だにしない

すごい…(*゚Д゚)

平日はゆっくり鑑賞していられないのでもどかしいです。

by しま (2008-10-08 21:08) 

keyaki

Sardanapalusさん
>これくらいのお手伝いならいつでもどうぞ~(^^)
ありがとうございます。助かります。

“Flashmobbing” とこのドン・ジョヴァンニのネットストリーミングについて書いてある記事を見つけました。前半は、ちゃんと訳していませんが、私のブログ(グリゴーロ君)でも記事にしました。
http://www.gramophone.co.uk/Interviews_detail.asp?id=3100
by keyaki (2008-10-09 01:20) 

Sardanapalus

しまさん>
>私の目から見れば「マダマダ細い」部類
そうですね、単にお腹周りに一回り肉がついた程度なので、しまさんの期待には添えないかもしれません。

>ヴァルガスのオッターヴィオ
こちらこそ、顔の大きさも俺様歌唱も、しまさんの好みにぴったりですね。見せ場の2幕のアリアは、ストリーミングではPart 8で聴けますよ。
http://www.roh.org.uk/video/index.html?bcpid=1733261711&bclid=1780606125&bctid=1813507352

ちなみに、不動の騎士長がいっぱい映ってる晩餐の場面は最後のPart 10です。
http://www.roh.org.uk/video/index.html?bcpid=1733261711&bclid=1780606125&bctid=1813502761

by Sardanapalus (2008-10-09 20:40) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>“Flashmobbing” とこのドン・ジョヴァンニのネットストリーミングについて書いてある記事を見つけました。
ありがとうございます!この人みたいにROHの「ドン・ジョヴァンニ」と駅でオペラの「椿姫」の両方見た人ってどれくらいいるんでしょうね?これからしっかり読んでみようと思います。

by Sardanapalus (2008-10-09 20:45) 

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