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イギリスの劇場コメディ作品紹介(Present Laughter、Absurd Person Singular、The 39 Steps) [演劇]

サマータイムマシン・ブルース スタンダード・エディション (初回生産限定価格)イギリスの演劇界と日本の演劇界を比べたとき、「やっぱりこういうのは日本の作品がいいな」と思える分野がひとつだけあります。それは、おふざけの要素の多い、日本で言うならば小劇場演劇でよく上演されるような作品群です。例えば劇団☆新感線(「ドラゴンロック~轟天~」)やヨーロッパ企画(「サマータイムマシン・ブルース」※映画化されています。詳細は左写真から)など、見終わった後に深く感動する、または考えさせられる作品というよりも、大いに笑って楽しんで、あ~すっきりした&楽しかった、と思えるようなエンターテイメント性の高い作品も私は大好きなのです。こういった芝居がいつでも楽しめるのは日本の演劇界の大きな特色ですね。本当に、イギリス留学中は時々無性に見たくなって大変でした(^_^;)でも、イギリスにも劇場で大笑いできる作品はあります!以前紹介した「ヒストリー・ボーイズ(History Boys)」もそんな作品の内のひとつでしょう。と言うわけで、今回は比較的最近楽しんだイギリスのコメディ作品について紹介したいと思います。




Present laughterまず、個人的にお気に入りの俳優兼劇作家兼作曲家、ノエル・カワード(Noel Coward)の作品は外せません!数年前にアラン・リックマン(Alan Rickman)とリンゼイ・ダンカン(Lindsay Duncan)共演でウェストエンドとブロードウェイでヒットした「私生活(Private Lives)」が有名ですが、私が見たのは「プレゼント・ラフター(Present Laughter)」という作品でした。こちらも、カワードらしいリアルな設定と計算しつくされた大騒ぎが繰り広げられる代表作だと思います。

あらすじ:1939年。アフリカへのドサ周り公演が決定している少々落ち目のスター舞台俳優ギャリー・エッセンダイン(Garry Essendine)は、旅立ちの用意をしつつもお得意の「かっこつけ生活」を続けていた。そんな中、彼に近づいてくる女優志望で追っかけの若い女性、今生の別れにと顔を見せに来る嫌味な別居中の妻、そしてギャリーに異常な執着を見せる神経症ぎみの若手劇作家などの濃いキャラクターが次々とギャリーの日常生活を邪魔しにやってくる。これら想定外の来客とのどたばたしたやり取りの中、かっこつけようとすればするほど彼の「酒と薔薇の日々」のイメージはほころびはじめて…。そこにロボットのような敏腕秘書、へっぽこプロデューサー、スウェーデン人の掃除おばさん、そして陽気な執事といったあくの強い脇役も巻き込んでギャリーがほころびを繕おうと大騒ぎするお話です。

初日のカーテンコールと観客&キャストインタビューこれはもう、芝居であんなに笑ったのは初めて、というくらい笑いました。とにかく誰にでも起こり得る設定の中、生き生きとして飾りのない登場人物のやり取りが抜群に可笑しいのです。既に中年なのにまだまだ20代そこそこの気分で人生を送ろうとするギャリーの、空回りと勘違いと自己弁護の台詞だけでもおなかが痛くなるくらい笑えます(^^)そんな一人大騒ぎのギャリーを冷やかに見守る秘書と妻、熱烈にアプローチしてくる追っかけと新進劇作家の温度差がとてもバランスよく配置されていて、テンポも良いので2時間半があっという間でした。台詞のタイミングなどがとても難しい芝居だと思うのですが、隅々まで意識の行き届いた演出と俳優陣の演技で、イギリスの演劇界のレベルの高さに改めて脱帽してしまいました。

ところで、この作品が書かれた1939年といえば、第2次世界大戦直前で、ギャリーのように無責任で贅沢で怠惰な生活を送るのが社会的に難しくなってきていた頃です。はたから見ればどうでもいいことをあれこれいじくり回し、細かい冗談で観客を笑いの渦に巻き込みながらも、その裏にある社会への皮肉や冷めた物の見方などが垣間見える、素晴らしいエンターテイメント作品でした。最近イギリスでもカワード作品が人気らしく、あちこちで上演されています。もし機会がありましたら、ぜひご覧になってください。損はしないはずです!あ、ちなみに、日本でも今年の秋に「私生活」を上演するようです。なかなか面白そうなキャスティングです。
Present Laughter @ Royal National Theatre
Director: Howard Davies

Roland Maule: Pip Carter
Joanna Lyppiatt: Lisa Dillon
Daphne Stillington: Amy Hall
Lady Saltburn: Frances Jeater
Garry Essendine: Alex Jennings
Morris Dixon: Tim McMullan
Liz Essendine: Sara Stewart
Miss Erikson: Anny Tobin
Fred: Tony Turner
Henry Lyppiatt: Simon Wilson
Monica Reed: Sarah Woodward




次は、現代イギリスを代表する喜劇作家アラン・エイクボーン(Alan Ayckbourn)「Absurd Person Singular」です。この作品は上のノエル・カワードの作品とは少し違って、イギリス人お得意の、自分をネタにしたブラックユーモアと、雰囲気の読めない成り上がりの行き過ぎた親切さと、社会的強者の傲慢さなどを見せつけて笑いをとる作品でした。

あらすじ:舞台は3つの家のキッチン。クリスマスの夜、シドニーと妻のジェーンは、シドニーの仕事への出資者ロナルドとマリオン夫婦、そして世話になっている設計者ジョフリーとエヴァ夫婦をホームパーティーに招いていた。何もかも準備万端だったはずだが、ロナルドのスーツにお酒をこぼしたり、ソーダ水が足りなくなって大雨の中買いに走ったり、結局ぐだぐだのパーティーになってしまう。しかし、翌年のクリスマスのジョフリーとエヴァの家でパーティーは、鬱状態のエヴァが隙あらば自殺しようと目論む中、ジェーンとシドニーはキッチンの掃除をはじめてしまうなど、更にヘンテコな展開に。その変な流れは更に次のクリスマス、ロナルドとマリオンの家のキッチンにまで影を落として、更に悲惨なパーティーが幕を開けるのだった…。

この芝居では3年に渡ってクリスマスパーティーを準備する3つの家のキッチンでの様々な出来事を見せてくれるのですが、その笑いはかなり自虐的で、好みの分かれるものだと思いました。最初の年はロナルド&マリオン≧ジェフリー&エヴァ>シドニー&ジェーンという力関係がはっきりしていて、社会的地位のある階級の客をもてなす為に駆けずり回って空回りするシドニーたちと、そんな夫婦を小ばかにしたような態度の招待客たちの温度差が可笑しいのですが、特にジェーンなんかはかなり可哀想です。次の年には、仕事に行き詰ってしまった上に浮気をしてしまったジョフリーとエヴァの冷め切った夫婦間のかみ合わない会話や、鬱状態のエヴァが手を変え品を変え自殺しようとするのを気付かないうちに阻止しながら他人のキッチンを大掃除し始めるシドニーとジェーンの言動に大笑いするのですが、これもエヴァなんかは真剣に死のうとしているわけで、不謹慎きわまりない笑いとも言えます。

3年目のパーティーに至っては、今や成功して各方面のパーティーに引っ張りだこの華々しいシドニー&ジェーンに比べ、落ちぶれたロナルド&マリオンとジェフリー&エヴァが冷え切ったロナルドの家のキッチンで明かりもつけずに静かに過ごしているのですが、そこに乱入してくるほろ酔いのシドニーとジェーンの空気の読めない無神経な言動と無理に盛り上げようとするパーティーゲームが、見ていて痛々しいくらいですし、アル中になってしまったマリオンに罰ゲームでジンを一気飲みさせたりと、ブラックユーモアも究極まで来ているような状態です。John Gordon Sinclairインタビューたった3年で社会的立場が逆転してしまった3組の夫婦は、きっとこれ以降パーティーを共にすることは無いでしょう。もしかしたら、この3年目の冷え切ったパーティーは、外見上は常に寛大で親切なシドニーとジェーンの密かなる復讐だったのかもしれません…コワイなあ(^_^;)そんな感じで、あまり後味の良い作品ではなかったので私の中では不完全燃焼のまま終わってしまった作品でした。(この居心地の悪さは、日本でも放送されたドラマ「オフィス(Office)」に非常に似ています。)一番楽しんだのは、「プロデューサーズ(The Producers)」をウェストエンドで見たときにレオ・ブルーム役だったジョン・ゴードン・シンクレア(John Gordon Sinclair)→の演じるジョフリーを見れたことでしょうか。相変わらず抜群のコメディセンスと台詞回しで、良い味をだしていました。

Absurd Person Singular @ Garrick Theatre
Director: Alan Strachan

Jane: Jane Horrocks
Sydney: Andrew P Stephen
Ronald: David Horovitch
Marion: Jenny Seagrove
Geoffrey: John Gordon Sinclair
Eva: Lia Williams




The 39 Stepsそして、イギリスで見た中で一番下らない(褒めています!)笑いを提供してくれたのが、2007年オリヴィエ賞のBest New Commedyを受賞したジョン・ブキャン(John Buchan)作「39ステップス(The 39 Steps)」です。もう、これはとにかくべたべたなストーリー展開を予想しつつ、そのあまりの馬鹿馬鹿しさを笑うタイプの作品でした。これこれ、こういうのがもっと見たいんです!(^^)

あらすじ:ある晩、主人公リチャード・ハンネイ(Richard Hannay)の元に助けを求めに来た美女スパイが、ハンネイのフラットで刺殺されてしまう。リチャードは牛乳配達人になりすましてフラットを抜け出し、警察の追っ手を逃れながらスコットランドへと向かう。そこには、女スパイが会う予定の男がいるはずだった…。

実は、既にあらすじのほとんどを忘れてしまっています。こういう芝居がストレス発散にはいいんですよ!(笑)と言い訳しておきましょう。原作はアクションの入ったサスペンススリラーなのですが、この公演では、1935年のヒッチコックの映画を元にしたパロディ作品に作り変えていました。とにかく、台詞回し、舞台上の動き、美女達への口説き方、惚れ易い女性達、2人1組の警官達、何もかもがスリラー王道の展開の上、大仰でわざとらしいのです。大体、出てくる3人の女性を全部1人の女優が演じるというところからして馬鹿にしています(^_^;)The 39 Steps: 逃げろ~!ハンネイが思っていることは全てナレーター風に節をつけて語るし、彼が張り込まれていることを確認するたびに警官達は舞台隅に街灯と共にちょこちょこ登場するし、窓から脱出!と言う場面で1メートル四方の木枠を潜り抜けたりするし(笑)、橋から川に飛び込む場面では、梯子を3つ組み合わせたちゃっちい運ていみたいなところにぶら下がってるし…とにかく探偵モノが好きな人ならだれでも笑いが止まらないと思います。

現在ロンドンとイギリス各地、そしてボストンで公演中のようですが、今年中にブロードウェイでもも開幕するようです。これは機会があったらぜひぜひご覧になってください。時間も100分程度と短いですし、大いに笑ってすっきり出来ますよ♪これからイギリスでもこういうお馬鹿な作品が増えてくると良いんですけどね~。

The 39 Steps @ Criterion Theatre
Adapted for the stage by PATRICK BARLOW
Director: MARIA AITKEN

Richard Hannay: SIMON PAISLEY DAY
Annabella Schmidt/Pamela/Margaret: JOSEFINA GABRIELLE
Clown 1: SIMON GREGOR
Clown 2: MARTYN ELLIS
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