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演劇『タイタスアンドロニカス』 [演劇]

現在イギリスのストラットフォード・アポン・エイヴォン(Stratford-upon-Avon)で、シェイクスピアの全作品上演サイクルの一環として上演されている『タイタス・アンドロニカス』を見てきました。蜷川幸雄の演出で、日本では2004年に初演され、今年も埼玉大阪で再演されているあの真っ白い舞台のものです。

初演時の評判がよかったし、渡英前に日本での再演を見ようかと悩みましたが、丁度この時期にロンドンから電車で2時間のストラットフォードにくるということが分かったので、今回の渡英のひとつの目玉としてずっと楽しみにしていました。といってもチケットをとったのはこちらにきてから。25歳以下はどこの席でも1000円で、前から5列目の見やすい席を入手できました。こんなこと、日本だったらありえないですね~。

今回も蜷川お得意の『劇をやりますよ』演出。開演前から舞台と会場の通路は役者達とスタッフでごった返しています。15分前、10分前、5分前とそれぞれにアナウンスが入り、狼を前にだせ、役者は位置につけ、などの指示がいちいちでます。最後に蜷川の掛け声と同時に照明が入り、芝居が始まるという形。パッと照明がついた瞬間に目の前に登場する、真っ白い壁に白い衣のローマ人達の図がとても美しかったです。


タイタスあらすじは長ったらしい上グロいのでのではしょりますが、ローマの将軍タイタスが戦利品の捕虜として連れ帰ってきた、旧ゴートの女王で現ローマ皇后のタモラ一派とタイタス達アンドロニカス家がお互いに残虐な方法で復讐を重ねていく血生臭い芝居です。ディズニーのミュージカル『ライオンキング』の演出で有名なジュリー・テイモアの映画←がありますが、これもかなりグロい出来です。イギリスでもあまり演出されることがなく、とにかく一般的にグロテスクな作品として認識されているようです。

今回の蜷川の演出では一滴も液体の血は流れませんが、そのかわりに赤い絹糸が傷口から流れでてきて、白を基調とした舞台に強い印象をのこしていました。これが液体だったら、その残虐な行為や流血していることに意識がいきすぎて内容が散慢になってしまうと思うので、この作品にはこういう様式的な演出が合っていると思います。ローマとゴートの色分けや相変わらず汎アジア的な衣装も、登場人物が多い中で勢力分布が分かりやすくて助かりました。後、背景に置かれるローマの雌狼の像がとても効果的だったと思います。帝国と権力の象徴でもあり、タイタスのアイデンティティの拠り所でもあり、どす黒く渦巻く陰謀と策略を全て見通す存在としてのローマ建国者達の像が常に登場人物達を見ているというのは、それぞれの行動が持つ意味というものを色々と考えさせられました。

役者では、吉田綱太郎のタイタスが素晴らしかったです。ちょっとお茶目なところもありながら、帝国に忠義を尽くす将軍という役作りが外見とピッタリと一致。タモラ達に狂ったと思わせているときの躁状態の楽しそうなことといったら(笑)特に、頭に矢の刺さった状態で登場してきた道化に持たせる皇帝への嘆願書を書くぞ!といって『ペンをよこせ!ペン、ペン、ペーン!!』と叫ぶと、もたつくタイタスの部下達を尻目に道化が矢の先をひょいっとはずして『ハイ』と渡す場面は本当にうまかったです。ここはこのドロドロした作品でほぼ唯一の笑い所だったのですが、私以上に後ろのイギリス人のおじさんのツボにはまったらしく、10秒くらい爆笑していました。その間も『あ、へ~、それペンになってたんだ』と気のぬけた反応をするタイタスがとてもおかしかったです。

他は、強姦されて舌と両手を切り取られてしまうタイタスの娘ラヴィニアの真中瞳、タイタスの弟でローマの護民官でもあるマーカスの壌晴彦、タモラの愛人のムーア人を熱演した小栗旬がよかったです。期待していたタモラ役の麻実れいは、体力を温存するためか前半ちょっと物足りない演技でしたが、休憩の後は妖艶さたっぷりの悪女になってました。声がかれている人もいたので、公演真ん中の1日2公演日ということで調整していたのでしょう。多少物足りないところはありましたが、久しぶりに重たい芝居を堪能しました。後残すは2回なので、皆さん無事に乗り切っていただきたいものです。


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コメント 7

春

わぁ 見たかったなぁ
どちらの劇場でしたか?
うらやましいじょーーー!!!

何語で上演したのですか?
by 春 (2006-06-23 23:42) 

keyaki

またまた写真に吃驚、舌を切られて、両手も、、絹糸でもかなり衝撃的。映画を思い出しただけで気持ち悪くなります。
真中瞳って、昔ニュースステーションで、舌ったらずのレポーターだった人ですよね。

ところで、アルバレスは16日も20日キャンセルだったようですが、今日は大丈夫ですか。20日はなんと、デッシーのパートナーのファビオ・アルミリアートが代役で歌ったそうですけど、ボローニャの引越し公演に出演しないのに、デッシーと一緒に来てたんですよね。
by keyaki (2006-06-24 02:01) 

Sardanapalus

春さん>
劇場は当然ながらロイヤル・シェイクスピア・シアターで、言語は日本語です。ちゃんと英語の字幕がでるんですよ。

keyakiさん>
度々驚かせてしまってごめんなさい。これでも失神者がでない演出なのでマシなほうなのですよ(^_^;)

>真中瞳って、昔ニュースステーションで、舌ったらずのレポーター
でしたね。私もプログラムみて、ああ!ってようやく気付きました。

>アルバレス
ホームページが間違ってなければ、23日は歌ったようです。20日をアルミリアートが歌ったというのも知りませんでしたが、つまり日本から戻ってきてすぐですよね?体力あるなぁ。
by Sardanapalus (2006-06-24 22:55) 

euridice

映画をテレビで見ましたが、強烈でしたねぇ・・・写真の場面がダントツ。舌を・・というのは、あちらではよくある話らしいのが、また強烈! 「ガープの世界」その他の映画や小説でいくつか目にしました。オ〜〜〜コワ^^;
by euridice (2006-06-25 09:42) 

Sardanapalus

euridiceさん>
本当にそこまでするか?という残酷な場面の連続なので、映画でとめておくのがいいかもしれません。

>舌を・・というのは、あちらではよくある話らしいのが、また強烈!
全くです。これ、今もっとリアルな演出をロンドンのグローブ座でやっているんですが、どうしても触手がうごきません(笑)
by Sardanapalus (2006-06-25 18:52) 

atlantisdream

こんにちは。お邪魔します。こちらのタイタス、ごらんになったのですね。親しい英人でニナガワのファンもいますし、私も行きたかったのですが、今回はロンドン公演がないのでパスしました。RSTは満員でしたか?
by atlantisdream (2006-06-29 21:49) 

Sardanapalus

atlantisdreamさん>
コメントありがとうございます。ようこそいらっしゃいました!

>今回はロンドン公演がないのでパス
という方も多かったでしょうね。会場の入りは、平日の昼公演だったので1階席は7割くらいでしたが、隣に座った地元のおばさんが「夜公演はいつも満員よ」と言っていましたので評判は良さそうです。プログラムを売っているおばちゃんも「この演出は最高よ!」と絶賛していました。相変わらずイギリス人の多い客席の反応も良かったですよ。
by Sardanapalus (2006-07-01 19:14) 

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