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オペラ「ビリー・バッド」(2) [オペラ(実演)]

連日大入りのENOの「ビリー・バッド」へまた行ってきました。批評も良いのがいっぱい出ましたからね~。お陰でバーは混みまくって身動きが取れませんが、ENOは席が埋まってくれて嬉しいことでしょう。前回は上手側、今回は下手側で見たのですが、この演出は下手から見るのが良さそうです。今回の方が全体として演出を楽しめました。

今回は遊び疲れからか頭痛が酷かったので頭痛薬を飲んで行ったらば、眠くて眠くて大変でした(笑)特に上官たちのおしゃべりとか、最後のヴィアのシーンは…記憶飛んでます(^_^;)やっぱりオペラ全体としては好みじゃないし、盛り上がりもいまいち無いし、苦手ですね~。なんで後1枚チケット持ってるんでしょうか、私(笑)でも、今回自分に合った見方を発見したので、次回はもっと楽しめると思います。それはクラッガートの視点で見てみること。よく考えれば、ミュージカル「レ・ミゼラブル」でもジャン・バルジャンよりはジャベール警部の方が感情移入しやすい私ですから、最初からクラッガートの立場で考えてみるべきだったのでしょう(笑)

今回の演出は、クラッガートの出てくる場面は全体的に「暗い」です。照明も絞って、ソロの部分なんてクラッガート以外は闇の中だったりして、トムリンソンの迫力のある声と合わさると怖さ満点!前回はこの演出が彼の「悪」としての性格を強調しているように思ったのですが、今回は彼の「強迫観念」や「孤独感」を感じました。

例えば、自分がたたき上げの軍人で、貴族階級の上官と船員達の間に挟まれて苦労して、力で押さえ込む手腕で今の地位まで来たけど結局上からは良い様に利用されて、下からは嫌われる損な立場に収まっているとします。そこに、若くて美形で健康的な青年がやってきて、いきなり船員の心を掌握してしまったとしたら?…面白くないどころか、今までの自分の人生を否定されてしまったかのように感じることでしょう。青年の天真爛漫さに惹かれつつも、その存在を認め、生き方を受け入れることは自分自身を否定することになってしまうBilly Buddその恐怖感と焦燥感、そしてこの感情を共有する者のいない孤独感が物凄いんです。これはトムリンソンの役作りにもよる部分も大きいと思いますが、 この演出のクラッガートには今の立場に至るまでの苦労と苦悩がにじみ出ていました。今回のトムリンソンのクラッガートは、以前見た映像←のリチャード・ヴァン=アラン(RIchard Van Allen)の細身で頭の良さそうな苦労人といった印象のクラッガートと共に、私のお気に入りになりました。

で、この視点から見ると、とたんにヴィアが嫌いになってきます。元々個人的に気に入らない役ですが、クラッガートのことを嫌いながら利用している、この根性が最悪!しかもビリーがクラッガートを殴り殺したら、勝手に「天使がクラッガートを殺してくれた」とか言っちゃって、頭大丈夫かしら?(笑)ロビンソンは情けない顔にひょろりとした長身(テノールにしては)なので、こういった優柔不断なヴィアにはぴったりです。批評では「まだまだ」という評価が多いですが、私としてはこれだけ歌ってくれれば充分です。

ビリーのキーンリーサイドは初日よりも調子が良かったようです。相変わらず動き回って、跳ね回って、ぶらさがって(笑)、元気いっぱいでした。彼のビリーは、クラッガートが「破壊してやる」と言いたくなるのも納得の、輝かしい魅力に溢れています。「若い者の輪に加わるには年寄りすぎるよ」というダンスカーに「そんなことないよ!」とちょっかいを出しに行ったり、先遣隊に志願して武器を取る時も「このほうがいいかな?それともこっち?」と剣と銃を持ち替えたりして落ち着かないし、細かいところが本当~に細かいんです。あのもやし君ヴォルフラム↓からは想像できない変わりっぷりです(笑)今回は声も良く響いていたし、'Look! Through The Port Comes The Moonshine Astray!'での感情のこもった声は特に感動的で、正に客席全体が彼の最期の言葉に聞き入っていました。今回の音源、もう少しビットレートの高い放送局が放送してくれないかな~と思ってしまいますね。映像にしないのも本当に勿体無いなぁ。

という感じで、2回目は所々睡魔と闘いながらの鑑賞になってしまいましたが、初日よりも慣れてきて調子の出てきたキャストを楽しみました。後、観客の反応が良かったのも面白かったですね。上官たちが「フランス人は嫌いだ!」と繰り返すところは笑いがおきたり、ビリーがクラッガートを殴り殺した後のヴィアのあまりの慌て方に苦笑が出たりしましたし、カーテンコールも熱狂的でした。


◆ENO「ビリー・バッド」批評:追加分◆

SimonKeenlyside.info批評がまとめてあります・写真多数
ConcertoNet.com
インディペンデント紙日曜版
サンデータイムズ紙

◆ビリー・バッド関連記事◆

ラジオ中継「ビリー・バッド」
オペラ「ビリー・バッド」
サイモン・キーンリーサイド(2):今日で46歳の男(コメント欄・TB先)


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コメント 6

dognorah

クラッガートの視点ねぇ、なるほど。つらい中間管理職的立場なんですね。少しずつ解釈が深まって、次の回ではかなりの通になれそうですね。

ビリーはヴィア船長の人格に惚れてこの人のためなら、という気になるのですが、そういう状態から指導力不足を露呈して最後には精神を病むような状況に落ちていく過程が演出不足なのかロビンソンの力量不足なのかうまく表現されていないのが退屈さを加速しているひとつの原因のような気もします。

またレポートを期待していますのでよろしく。
by dognorah (2005-12-14 01:05) 

agojun55

風邪が続き、ENOにいけない状態。 イーイーなー、券をもっていて、もう終りなんでしょう?
by agojun55 (2005-12-14 06:52) 

ロンドンの椿姫

私も同じパフォーマンスを観ましたが、とても良い出来で全然退屈せず、あのROHの脇役ロビンソンも立派にここまで育ったと感激すらしました。

可哀相なのは死んでしまうビリーだけど、「迷い苦しむ」と意味ではヴィア船長とクラッガートの方が苦しむわけで、二人の苦悩に心が痛みました。

ROHの5年前のプロダクションやTアレンの映像と比べると、今回は同性愛を前面に出した演出で、クラッガートがなぜビリーを抹殺しようとしたかは複雑ですが、今回は「愛しているビリーを自分のものにはできそうもない。ならば他の誰にも渡すものか」という気持ちもあるにちがいないと感じました。

そう言えばテレビでやってた1962年の映画もみたことあります。これで映画デビューのテレンス・スタンプがめっちゃんこ美しかった!
http://ameblo.jp/peraperaopera/

私が記事を書く前にSardanapalusさんは3度目を見に行ってすぐ記事を書けちゃうんでしょうね。私はいつもえらく時間掛かる書きたいことはたくさんあるのに週末にならないと書く時間のない残業サラリーマンの我が身が恨めしいです。
http://ameblo.jp/peraperaopera/
by ロンドンの椿姫 (2005-12-14 07:09) 

Sardanapalus

dognorahさん>
>ヴィア
>指導力不足を露呈して最後には精神を病むような状況に落ちていく過程がうまく表現されていないのが退屈さを加速
確かにそうですね。私はもともとなんでヴィアが「きらめく星のヴィア」とか呼ばれて親しまれているのか不思議でならないんですけどね。オペラの中じゃあはっきり言ってあまり有能さをみることが出来ないので(笑)

今日も行ってきますので、帰ってきたら頑張って記事にしますね。今度はビリーの視点から見てみます。
by Sardanapalus (2005-12-14 19:32) 

Sardanapalus

agojun55さん>
>風邪
大丈夫ですか?お大事にしてくださいね。まだ17日までやってますから、今のうちにしっかり休んで治して、最終日に行くというのはどうですか?

>イーイーなー、券をもっていて
私の中では今日の公演が最後の予定です。気が向いたら17日の安いチケットも買っちゃうかもしれませんけど(笑)
by Sardanapalus (2005-12-14 19:35) 

Sardanapalus

ロンドンの椿姫さん>
>今回は同性愛を前面に出した演出で、クラッガートがなぜビリーを抹殺しようとしたかは複雑
クラッガートのビリーへの愛情は思いっきり屈折していると思います。今回の演出ではクラッガートとビリーの関係が結構しっかり描かれていて面白かったです。「派手なスカーフを取れ!」と言った後にスカーフを手渡すように黙って手を出すところとか、クラッガートの心を深読みしたくなりますね。

ロンドンの椿姫さんの記事楽しみにしていますので、ゆっくり仕上げてTBしにきてくださいね~。
by Sardanapalus (2005-12-14 19:42) 

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