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演劇「クレンズド」

もう3日前ですが(「仮面舞踏会」の前日)、28日にロンドン北部にある、倉庫を改装して作られた小劇場アルコラ・シアター(Arcola Theatre)で公演中のサラ・ケーン(Sarah Kane)作、「クレンズド(Cleansed)」というアンダーグラウンド演劇を見てきました。今回の公演はオックスフォード・ステージ・カンパニー(Oxford Stage Company)によるものです。

 

あらすじは…まとめるのが凄く難しいのですが、時代は現代。ドクターと呼ばれるティンカー(Tinker)が管理している施設で繰り広げられる兄妹、同性、客とストリッパー、施設の同居人、それぞれの愛の形を群像劇として書いています。ティンカーの元にヤクをもらいにやって来て、そのままオーバードーズで死んでしまった兄グレアム(Graham)の痕跡を追ってやってきたグレース(Grace)は、幻覚の中で愛する兄と再会する。が、ティンカーは彼女の「兄を常に感じていたい、もしそれが無理なら殺して」という望みを叶えるため、彼女に無許可で性転換手術を行う。死んだグレアムの服を下着まで一式貰って着ていたがやって来たグレースにいきなり服を交換するように強要され、ずっと彼女のワンピースにストッキング姿でいる純朴な青年ロビン(Robin)は、憧れのグレースに気に入ってもらおうと文字を覚えたり、チョコレートを買ってきたりするが、結局本を燃やし、チョコレートは全て自分で食べつくすようにティンカーに強制されてしまう。

また、同性愛カップルのカール(Carl)ロッド(Rod)もティンカーによってその愛を試されることになる。ロッドは「今、お前のことを愛している。でも、これからのことは分からない。お前に嘘はつけない」と言うが、饒舌なカールは満足せず、熱烈な言葉でロッドに永遠の愛を誓う。ところが、そのカールはティンカーの拷問で「オレじゃなくてロッドにやってくれ!」と最愛のロッドを裏切ったうえ、それを後悔し、何とかロッドへの愛を示そうと努力するたびに始めは舌、続いて手、足、と次々に切り落とされてしまう。最後にはティンカーはカールの目の前でロッドを殺し、グレースへの思いを伝えられず自殺してしまったロビンの代わりにカールにグレースの着ていたワンピースを着せる。冷酷に見えるティンカーも、グレースという名のストリッパーの元へ通い、「お前を愛している。ここから助けだしたい」と愛の言葉を語っていた。最後は、愛するものを奪われてしまった2人、喋れなくなったカールと性転換させられたグレースが舞台の真ん中で静かに座り、グレースが愛する人のいない人生について語る独白で終幕。

という感じで、流石はアングラ、テーマは重たいし、グロいシーンもあるし、全裸シーンもあるし、それぞれの関係の幸せな状態がだんだんと追い詰められていく過程を見続けるので、見終わってから頭痛がするほど疲れましたが、人間の愛って、本当に多様で計り知れないものだな、と再確認しました。ああ、でもロビンが折角心を込めて買ってきた箱詰めのチョコレートを、全部残らずひとつずつ食べさせられるシーンは、見ているのが本当にきつかったなぁ。ティンカーは一見冷酷に見えますが、実は彼なりの方法で施設にいる全ての「患者」達を一番愛していたんではないかと思います(こんな愛され方は嫌ですけど…)。ストリッパーの名前も施設にやってくる女の子もグレースというのは、必ず含みがあると思うのですが、その辺りは明確には示されないので観客が自由に想像してそれぞれで納得のいく答を出して欲しい、というような構成でしたね。

劇場自体は倉庫を改装した場所ということで、舞台=床でした。で、広いスペースの片隅にスタジアムみたいな状態の客席が140席作ってあって、舞台スペースには支柱が何本も立っています。勿論、柱で見切れてしまうシーンもありますが、そういった要素もオフ・ウェストエンド、日本で言うならアングラ劇場系の作家や演出家に人気がある理由なのでしょう。1時間20分程度の短さでしたが、内容はぎゅっと詰まった、濃い芝居でした。


◆'Cleansed'批評◆

ガーディアン紙(☆☆☆)
タイムズ紙(☆☆☆☆)
This is London
musicOMH.com
London Theatre Guide The Big Interview
オックスフォード・ステージ・カンパニー芸術監督ドミニク・ドロムグール(Dominic Dromgoole)インタビュー。'Cleansed'を公演する理由について語ってます。


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コメント 4

助六

ケーンは6作だけを残して28歳だかで首吊っちゃったらしいけど、モーツァルト、シューベルト同様(ちょっと違うけど)こういう密度の高い人生を送る人は、破滅的に生き急ぐことに必然的になるのかなとかふと思います。
ご紹介下さっている筋を読んで、エリザベス朝の流血悲劇ウェブスターの「モルフィ公爵夫人」を思い出しました。エロ・グロ・流血・逃れようのない逼塞の論理はやっぱりイギリスの伝統?
by 助六 (2005-12-02 09:00) 

Sardanapalus

助六さん>
ケーンをご存知でしたか。私は今回初耳で、彼女が既に故人であることも、これを見に行く日まで知りませんでした。

>密度の高い人生を送る人は、破滅的に生き急ぐことに必然的になる
今回のいくつも出た批評の中で、「ケーンは元々精神的にちょっとアレだったからこういう愛と暴力が入り混じった脚本を書けたんだろう」とか言ってる人もいました。翌日とか3日後とかにふと思い出したときに深く考えさせられるような内容の芝居です。

>エロ・グロ・流血・逃れようのない逼塞の論理
特に逼塞ってところは特にイギリスっぽい部分かもしれませんね。邦題は分からないんですが、'Gangstar no.1' 'Layer cake' 'Enduring Love'といったイギリス映画を見ても、どことなくそんな感じがします。
by Sardanapalus (2005-12-02 09:30) 

Sheva

別件ですみません~ bbcのリンク感謝です。さっそく聞きました。テキスト(ファンサイトさん)もあって英語の勉強になりました。でもBilly Budd を見ていないのでいまいちよくわかりませんが… 
Simon、EnglishEnglishですね~Softですね~ 
もう初日があきますね~ 楽しんでくださいね。
SimonのインタビューでBilly今回が最後と知り、すごくショックを受けてしまいました…悲しすぎる!
by Sheva (2005-12-04 00:20) 

Sardanapalus

Shevaさん>
「ビリー・バッド」初日の記事、早速書きましたので、またご覧になってくださいね。

>別件で
いえいえ、ソネットは掲示板が無いのでこちらで構いませんよ~。楽しんでいただけましたか?そうそう、ファンサイトの管理人さんが早速文章におこしてくれたページもリンクしておきます。

>Simon、EnglishEnglish
ですね(笑)北の方のアクセントが入ってるのかなぁ?ちょっとロンドンっ子とはアクセントが違うと思うんですけど、thやkの発音とかはどう聞いてもイングランド人ですね~(笑)

>Billy今回が最後
ファンとしては、音源だけじゃなくて映像にも残して欲しいものです!トムリンソンのクラッガートと一緒にぜひ!って、誰に頼めばいいんだよう(T_T)
by Sardanapalus (2005-12-04 12:01) 

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