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オペラ「魔笛」@コヴェント・ガーデン(2003年) [オペラ(音源・映像・その他)]

Die Zauberflote (Dol) このブログに来てくださっている方は「またこれ?」と思われるかもしれませんが、実はあれほど頻繁に話題に出しながら内容について語っていなかったので、デヴィッド・マクヴィカー(David McVicar)演出のコヴェント・ガーデンの「魔笛(Die Zauberfloete)」についてまとめてみました。あらすじは…省略。今回は本当に省略です(笑)あんなメンドクサイ筋を書けるかっ!


 


   

この演出、全体的に暗いです。いつものマクヴィカーです(笑)が、本人が「今までで一番の出来」と語っている通り、シンプルな中になかなか個性の出た演出です。照明の使い方も分かりやすくて綺麗だし、メルヘンの部分と現実的な部分が上手く混ざっていて、役それぞれの性格も好き嫌いは分かれるでしょうけど、しっかりと描き分けられています。この演出は歌手だけじゃなくダンサーが大活躍なのですが、上手な使い方だと思います。序曲の間は黒い衣装のダンサー達が光の玉を持って客席のあちこちに登場しますが、実際に体験すると暗い客席に光が散らばって綺麗でした。冒頭にはちゃんとでっかい蛇が出て来ますが、ここも中国のお祭りに出てくる竜の張りぼてのようなもの(ただし色は黒)を、ダンサーが操ってタミーノを取り囲んだりして面白いです。パパゲーノが捕まえようとする鳥もダンサーが操ってます。その他にも、魔笛に引き寄せられて出てくる動物達は顔だけ動物のマスクをつけたダンサー達。こうして書くとギャグっぽいですが、振り付けのお陰か、すんなり「動物」として見れます。更に、火と水の試練ではタミーノとパミーナの後ろでダンスを踊ってその様子を表したり、最後まで大忙しです。

この演出で特に好きなシーンは、パミーナとパパゲーノの二重唱。マクヴィカーが「ここは音楽が素晴らしいから演出はいらない。ってことで、歌手には舞台の前で座ってもらった」と言うとおり、がらんとした舞台の真ん中に二人だけ座って歌われるこのシーンは、実際に劇場で見るとかなり感動的でした。映像だとその効果がいまいち伝わりにくいですけどね。音楽的にもパミーナの声とやさしく重なるパパゲーノの声が心地良いです。他には、寺院とモノスタトスの手下(モノスタトスも含めて皆白人)の中に子供がいるのが気に入ってます。

      

衣装はパパゲーノとパパゲーナと3人の童子以外は中世ヨーロッパ風。国は特定できませんし、タミーノもヨーロッパの貴族っぽい服を着ています。3人の童子は19世紀後半のストリートチルドレンといった感じですね。パパゲーノたちの衣装は現代。汚いスーツにアヒルの編みこんであるベストにアヒルのくっついた帽子のパパゲーノと、ピンクのキャミソールにミニスカートのパパゲーナは、そのほかの中世ヨーロッパにメルヘンを足したようなキャラたちから激しく浮いています(笑)これは、観客をこの2人に同化させる為でしょうか。確かに、パパゲーノの言動は現代人でも日常的に感じていることなので、こういう「身近さ」を強調することで、このごちゃっとしたオペラを分かりやすくすることには成功していると思います。パパゲーノがパパゲーナに押し倒されてるしね(笑)

分かりやすく、という視点からだと、ザラストロと夜の女王がパミーナを取り合うそれぞれの理由もしっかりと台詞で聞かせてくれます。ここ、殆どの演出でなあなあにされてしまっていますが結構重要なポイントだと思います。「何で前半と後半で善悪が逆転するの?」「何でザラストロはパミーナを監禁しているの?」というストーリーの根本的な部分をこれくらいしっかり見せてくれないと「『魔笛』って良くわかんな~い」となってしまいますからね。マクヴィカーは、スピードが必要なところでは結構ばっさりと台詞をカットしてますが(特にパパゲーノ)、この2人は殆どノーカットなんじゃないでしょうか。夜の女王がこんなにべらべらと喋る役だとはこの演出を見るまで知りませんでした(笑)でも、こうした方が彼女の男達への怒りの激しさの理由が分かっていいと思うんですけどね。

歌手達の中では、まずディアナ・ダムラウ(Diana Damrau)の、イっちゃってる夜の女王が圧倒的です。まだ若いのに声も出るし、演技も激しくてこの演出の女王のイメージにぴったりです。DVDを出しているOpus Arteのページで1幕のアリアの一部が見れます。イっちゃってます(笑)それから、通常のお遊び担当というよりは、「選ばれた者」を冷めた目で見ているアンチヒーロー的な性格のパパゲーノサイモン・キーンリーサイド(Simon Keenlyside)が気に入っています。とりあえず、彼のパパゲーノを映像で見れるだけで嬉しい。この映像のパパゲーノに何か言いたいことがあるとしたら、それはずばり「収録前に奈落に落ちて怪我しちゃだめでしょ!」です(^_^;)やっぱり動きもギクシャクしているし(演技は半分くらいだと思います)、声も前半はいまいち乗り切っていないし、後半に行くに従って明らかに左手を庇いだすし…。今年の再演での舞台を見ているので、余計に細かいところが気になるんですよねぇ(^_^;)気になると言えば、NHKの放送の字幕、パパゲーノの一人称が「私」でしたね。字幕付きで見たらやけに言葉遣いの良いパパゲーノでビックリしました(笑)

  

他の歌手も良く揃っています。「げ、この人は勘弁して!」という歌手はいません。タミーノヴィル・ハルトマン(Will Haltmann)「俺様」タミーノ↑を図太く歌ってます。繊細さは無いですが、自尊心の塊みたいな彼が沈黙の誓いを守ってパミーナを退けた後の「これで正しかったのか?」という表情と、パパゲーノに嫌悪感を示されて落胆する様子にはなかなか説得力があって良いと思います。パミーナドロテア・レシュマン(Dorothea Roeschmann)も豊かなソプラノを聞かせてくれます。このパミーナは母親べったりですが、ちゃんと自分の考えも持っていて受身ではありません。西郷どんザラストロフランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ(Franz Josef Selig)も(写真右)まあ、良いんじゃないですか。この演出ではザラストロは絶対的な「独裁者」と言うより、「指導者」っぽいし、トーマス・アレン(Thomas Allen)弁士(左)につっこまれたりしてるし(笑)印象は薄くなっても仕方ないかと…。アレンもそうですが、脇役にちょっと前のスター歌手を使っているのも贅沢なものです。特に司祭2(パパゲーノを連れて行くバスの方)をやっているリチャード・ヴァン・アラン(Richard Van Allen)(真中)は素敵な声とコミカルな演技を披露してくれるので、こんなチョイ役で勿体無さすぎるくらいです。


ロイヤル・オペラ(コヴェント・ガーデン) 2003年

指揮:コリン・デイヴィス
演出:デヴィッド・マクヴィカー

ザラストロ:フランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ
夜の女王:ディアナ・ダムラウ
タミーノ:ヴィル・ハルトマン
パミーナ:ドロテア・レシュマン
パパゲーノ:サイモン・キーンリーサイド
パパゲーナ:アイリッシュ・タイナン



◆魔笛関連の過去記事◆

パパゲーノの謎…というほどでもないですが
オペラ「魔笛」@スカラ座(1995年)
オペラ名演出?迷演出?


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euridice

あ!出ましたね^^!
写真がたくさんあって楽しいです。
とりあえずTBさせてください。
by euridice (2005-11-16 08:03) 

Orfeo

TBありがとうございます。
早速楽しく読ませていただきました。
なんか、気合が入ってますねえ(笑)。
TB返しさせていただきました。
by Orfeo (2005-11-16 09:01) 

Sardanapalus

euridiceさん>
早速のTBありがとうございます!こちらからも早速伺いますね。

>写真がたくさん
一応これでも削ったんです~(笑)パパゲーナに押し倒されるパパゲーノとか、女王のアップとか。

Orfeoさん>
TB返しありがとうございます♪
>気合が入ってますねえ
いや~好きな演出なもんですから…。ついつい頭から順番にコメントしそうになるのをこらえながら書きました。それでも長いんですけどね(^_^;)先日の「ドン・カルロス」に続き、これも「演劇」として繰り返し見て楽しんでいる演出のひとつです。
by Sardanapalus (2005-11-16 18:01) 

Amy

初オペラ体験が、コベントガーデンのピアッツァで無料中継された、この「魔笛」でした。パミーナとパパゲーノの二重唱、サイモンの声に一目惚れ(一聴き惚れ?)し、結局別の日に当日券を買って生で観ました。

この場面、パパゲーノの差し出した手にパミーナが手を重ねるところの、パパゲーノのちょっと照れた嬉しそうな目の表情が好き!
2幕で、3度目の口笛にも何の反応もなかったときに「上等じゃないか!」とでも言うようにきらっと目つきが変わるところも、ゾクッとします。(細かくてすみません)
他にも、3人の侍女が王子を見つけて張り合うところや、夜の女王の迫力etc....正直、オペラがこんなにも芝居としても楽しめるとは、意外で嬉しい初体験でした。

マクヴィカーは俳優の使い方が本当にうまいですね。モネ劇場の「ドン・ジョバンニ」でもそう感じました。
by Amy (2005-11-16 21:00) 

Belle de Nuit

>実際に体験すると暗い客席に光が散らばって
そうだったんですか! なかなかファンタスティックですね。
この部分、DVDでは球形のライトを持った男女が客席を歩いてくるシーンのみしか写っていなかったので、この2人しか登場していないのかと思ってました。素敵な演出なのに、映像では全体が見られなくてちょっと残念。
>パパゲーノがパパゲーナに押し倒されてるしね(笑)
さすがにこの演目では例の「得意技」は出ないだろうと思っていたら、
そう来るか! っていう演出だったので、思わず笑ってしまいました。絆創膏がカワイかったわ。(^^)
>イっちゃってる夜の女王が圧倒的
はい、一票。夜の女王というと、私の中ではどうしてもエディタ・グルベローヴァになってしまうのですが、この夜の女王は迫力ありましたね。衣装もメイクも似合っていたし、華もあって好きです。
by Belle de Nuit (2005-11-16 21:42) 

Sardanapalus

Amyさん>
>サイモンの声に一目惚れ(一聴き惚れ?)
分かります分かります!彼のパパゲーノは生で聞くと50パーセント増しで良い声してますよね。

>3度目の口笛にも何の反応もなかったときに「上等じゃないか!」とでも言うようにきらっと目つきが変わるところ
確かに細かいですけど、私もここ好きですよ!普通は笛を3回鳴らして数を数えるのに、このパパゲーノは3度目は口笛なんですよね!「本当は止めて欲しい」っていう気持ちが出ていると思います。反応が無かった後の冷めた目と捨て鉢な感じは、真剣に自殺しようとしているんでしょう。これくらい真剣にやってくれれば、この後のパパゲーナとの再会も心から「良かったね~」と思えます。

>オペラがこんなにも芝居としても楽しめるとは
私がマクヴィカーの演出が好きなのは「演劇として楽しめる」からだと思います。彼の演出なら、例え歌詞が全て台詞でも眠くならずに見れるでしょう。
by Sardanapalus (2005-11-17 07:14) 

Sardanapalus

Belle de Nuitさん>
>なかなかファンタスティック
そうなんですよ。それで、観客もすんなりメルヘンの世界に入っていけるというか。1階だけじゃなくて2階3階席の通路にまで登場してました。

>絆創膏がカワイかった
そうですね♪(笑)実はこれ、私が実際見たときは無かったので小道具ではなさそうなんですよね。奈落に落ちたときにすりむいたのかなぁ?

>>イっちゃってる夜の女王が圧倒的
>はい、一票。夜の女王というと、私の中ではどうしてもエディタ・グルベローヴァ
グルベローヴァは音源として聞くなら最強ですが、芝居として、台詞も動きも含めると、このダムラウの女王の方が好きです。何せ怒涛のように喋りまくっている時なんて目から火が出そうだし(笑)
by Sardanapalus (2005-11-17 07:23) 

ヴァラリン

>西郷どんザラストロのフランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ(Franz Josef Selig)
(⌒▽⌒)きゃははは 覚えていて下さったのね(笑)

夜の女王とザラストロの台詞に関して、以前書いた記事をTBさせて頂きますね。
by ヴァラリン (2005-11-17 08:19) 

Sardanapalus

>>西郷どんザラストロのフランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒ(Franz Josef Selig)
>(⌒▽⌒)きゃははは 覚えていて下さったのね(笑)
だってゼーリヒを言い表すのにぴったりの例えなんですもの(笑)

TBありがとうございます。そういえば、台詞ネタで盛り上がりましたね!リンクの中にあるオペラ「魔笛」@スカラ座の記事からヴァラリンさんとeuridiceさんが詳しく台詞を検討している記事群のページへリンクしています。興味のある方へ、直接のURLはこちらです↓
http://www.geocities.jp/traeumereienvalencienne/collabo-02.htm
by Sardanapalus (2005-11-17 10:05) 

しま

こんにちは。お言葉に甘えてお邪魔しました(*´∨`)
過去記事にコメントというのもどうかと思いましたが、新しめの記事はワタシの知識が追いつかず、なかなかコメントできないもので;;;

アレンのカツラにも「おおおっ!?」ですが、それよりも隣のフランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒに目が釘付けになってしまいました(*゚Д゚)
見た目では(声でも?)完全にアレンを食っていますね。彼の歌唱がどんなものか、(演技も)とても気になります。

ヴァン・アランが出ているのもオイシイですね。やっぱDVD買おうかな~。
キーンリーサイドの演技とかも見てみたいですし。
by しま (2007-03-21 13:51) 

Sardanapalus

しまさん>
いつの記事でもコメント大歓迎です♪どうぞじっくりアレンのカツラを観察してください~(^^)そうそう、ゼーリヒのザラストロも見た目のインパクト有りますね(笑)でも、画面で見ると結構普通かもしれません。一番巨大で派手なのは確かですが。

>ヴァン・アランが出ているのもオイシイ
これは本当にオイシイです!キーンリーサイドとのからみでは2人で小技を繰り出していてかなり笑えますし、声もまだまだ素敵ですv
DVDは日本語字幕なしですが、とってもお勧めですよ♪
by Sardanapalus (2007-03-21 18:45) 

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