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オペラ「真夏の結婚」 [オペラ(実演)]

ヴェルディで勝手に盛り上がっている中、8日に只今コヴェント・ガーデンで公演中のオペラ、マイケル・ティペット(Michael Tippett)「真夏の結婚(Midsummer Marriage)」を見てきました。ティペットは今年、生誕100周年だそうで、PROMSでも彼の曲を取り上げたコンサートが多数開催されました。その時に聞いた「我らが時代の子(A Child of Our Time)」の印象が強く残っていたので、今回のオペラもちょっと期待して行きました。

あらすじ:恋人同士のマークジェニファーは、マークがアンシエンツ(Ancients)と呼ぶ不思議な人々の寺院のある森の中で結婚式を挙げようと友人達を連れてやってくる。ところが、式の直前にジェニファーが「欲しいのは愛ではなくて真実」と宣言し、ジェニファーはアンシエンツの寺院の階段から光の溢れる天上へと去っていってしまう。それを見たマークも「女が光なら男は影」と言いながら、寺院の門から地下へと姿を消す。そこへ2人の結婚に反対しているジェニファーの父王キング・フィッシャーがやってきて、二人が消えたという寺院を調べる。アンシエンツから寺院は「相応しい者」しか受け入れないので2人が出てくるのを待つしかないと聞かされ、その彼らの態度を馬鹿にするキング・フィッシャー。秘書の彼氏ジャックを使って門をこじ開けようとするが、天上からの声に警告されてしまう。そこへ戻ってきたジェニファーとマークは、キング・フィッシャーの言葉には耳を貸さず、今度は立場を逆転してマークが天上に、ジェニファーが地下に去っていってしまう。すっかり逆上したキング・フィッシャーは、ソソストリス(Sosostris)という預言者の力を借りて、ジェニファーの様子を聞きだそうとする。ソソストリスが語るジェニファーの心象風景にマークが登場すると、キング・フィッシャーは逆上して彼女のベールを剥ぎ取ってしまう。更に「真実を述べろ!」とソソストリスに迫るキング・フィッシャーだったが、その時寺院の中から光と共にマークとジェニファーが姿を現し、マークを殺そうとするキング・フィッシャーは逆に超自然的な力で絶命してしまう。キング・フィッシャーは埋葬され、「魂が浄化された」マークとジェニファーは夏至の日(Midsummer Day)に結婚するこになり、大円壇。

この本筋とは別に、キング・フィッシャーの秘書のベラ(Bella)とその恋人ジャック(Jack)の自然体の恋愛、キング・フィッシャーの金に群がるマークの男友達に対して金に見向きもしないジェニファーの女友達、昔から年寄りのままで変わらないアンシエンツの集団のダンサー達の摩訶不思議な動きなど、深読みしていける要素が満載のオペラでした。寺院、不思議な賢人達、「真実」探し、「誘拐された」子を求める親、「選ばれし者」と「自然体」の2組の恋人達、こうして気になる要素を並べていくとちょっと「魔笛」っぽいですね。はっきりいって、これをすぐに理解するのは難しいです(^_^;)

今回の演出は今年の夏のザルツブルク音楽祭で話題を呼んだ、高校生民野君(タミーノ)の「魔笛」を演出したグラハム・ヴィック(Graham Vick)。この演出はセットデザインもシンプルですが個性的で、アンシエンツの寺院が雲の浮かぶ空の絵が描かれた球形だったり、森の中といっても舞台はほぼ寺院の壁らしきものに囲まれていて、真ん中の隙間から後ろに木立が見えているだけで想像力を刺激するものでした。dognorahさんの記事で紹介してくださっているプログラム内の絵も印象的ですが、この舞台美術、私はベルギーのシュルレアリズムの画家ルネ・マグリット(Rene Magritte)の絵を連想しました。木の直立ぶりとか、あの空と赤茶色の使い方とかが特に。参考作品:聖者の記憶(上)、白紙委任状(下)

ベージュの床は黒墨で書かれた路上遊びの痕跡があちこちに残る子供の遊戯場になっていて、3幕のソソストリスの黒いベールはこの床と色を反転しただけものだったり、中々考えられています。マークとジェニファーが2度目に寺院から出てくるときは、球が蓮の花の形に開き、その中で2人が仏教系のポーズをとったりしていたので、「パンとワインと魚を食べる(キリスト教の食事)とか言ってるのに何故いきなり『極楽』!?」とつっこんじゃいましたけど(笑)衣装も、アンシエンツたちは裸足に黒いスーツ、マークとジェニファーと友達は白い服、という感じで登場人物の殆どは非現実的な雰囲気の中、キング・フィッシャー、ベラ、ジャックだけが実用的で色のついた服を着ていたのも面白かったですね。銃が登場した時には、「魔笛」のロシアンルーレットを思い出して苦笑い…。

途中何度かだれながらも、結構強い印象が残ったのは音楽の力でしょうか。とにかく合計60人くらいいそうな友達の合唱が力強くて、正にティペットっぽい雰囲気で楽しめましたし、英語の歌詞も滑らかに音符に乗っていたように思います。現代の作曲家ですが、メロディアスな曲も多いし、かなり長いバレエシーンもあります。40分ある2幕は、ベラとジャックのデュエットの後はダンスしかありません。流石にこれは長かった(笑)歌手の中ではキング・フィッシャー役のジョン・トムリンソン(John Tomlinson)とベラ役のコーラ・ブルグラーフ(Cora Burggraaf)が特に気に入りました。トムリンソンはつい先日の「ジークフリート」でも聞いたのですが、声量豊かなバスがキング・フィッシャーにぴったりでした。ブルグラーフは名前の表記もこれで合っているのか分からない初体験の歌手ですが、チャーミングな秘書を好演。声も役に良く合っていたし、ジャック役のゴードン・ギエツ(Gordon Gietz)とのコンビも素敵でした。ヴィル・ハルトマン(Will Hartmann)は広い声域を駆使するマークを若々しく歌いきっていましたが、相手のジェニファーのアマンダ・ルークロフト(Amanda Roocroft)はいまいちぱっとしない感じでした。彼女よりも、同じヤング・アーティストプログラムに参加しているケイティー・ヴァン・クーテン(Katie Van Kooten)の方が好みだなぁ、ってそんなことはどうでも良い話(^_^;)

20世紀のオペラ作品にしては、抽象的で難解なテーマを扱っているなかなか珍しいオペラだと思います。これを脚本から書いたティペットって、結構凄い人ですね。


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コメント 8

dognorah

こちらからもTBさせていただきました。
マグリットのシュールレアリズムも、解説書のどこかで言及していましたが、ぴったしの絵を見つけられましたね。Vickさんは絶対これを参照していますね。
ブルググラーフに関して意見が一致してうれしいです。いい声でしたよね。ジェニファーにKootenというのにも賛成1票です。
by dognorah (2005-11-10 09:48) 

Sardanapalus

dognorahさん>
>マグリットのシュールレアリズムも、解説書のどこかで言及
やっぱり!参考にあげた絵でも、特に上の「聖者の記憶」は、正に舞台装置をひっくり返しただけような雰囲気の絵ですよね。あまりにそのままの色調だったのでびっくりしました。でも、この舞台装置はオペラの超自然的な内容とよく合っていたと思います。

>ジェニファーにKootenというのにも賛成1票
ありがとうございます。今回はなぜこのキャスティングだったんでしょうね?絶対ヴァン・クーテンの方が似合ってるのになぁ~。
by Sardanapalus (2005-11-10 10:17) 

euridice

このオペラは題しか知りません。画像の印象では、ワーグナーの「パルジファル」が浮かびます・・・特に、下の二枚。森を行く乗馬の騎士?!は、まさにパルジファル^^;
by euridice (2005-11-10 10:29) 

Sardanapalus

euridiceさん>
>画像の印象では、ワーグナーの「パルジファル」
あ、実は下の絵は女性なんです(^_^;)舞台装置が、こういった摩訶不思議な感じだったというだけで、話自体はもっと観念的というか、宗教観とか精神論についてこねくり回している感じです。ごちゃっとしていて、まとまりきっていないし、騎士は出てこないし(笑)「つまらない!」と言い切ってしまいそうなのに、何故か見た後に色々と考えたくなってしまうオペラです。けちってプログラムを買わなかったので未だによく分からない(笑)

ちなみに、12日(日本時間13日)にラジオで生中継されるようです。何故か本局のBBC Radio3は26日(日本時間27日)ですが、オペラキャストさんの情報では、他のもっとビットレートの良い放送局でリレー中継するようなので、興味がおありでしたら是非13日に聞いてみてください。
http://nextweek.operacast.client.jp/051112.html
by Sardanapalus (2005-11-10 20:35) 

ロンドンの椿姫

やっとティペットの感想が書けたのでTBさせて頂きました。

Sardanapalusさん、毎日精力的に書いてらして凄いです。私は仕事が忙しい上にスポーツジムにも毎日行きはじめたので時間の余裕がなくて、オペラを観てもすぐ書けません。ま、ボチボチやるしかないですが。
by ロンドンの椿姫 (2005-11-17 06:34) 

Sardanapalus

ロンドンの椿姫さん>
いつもTBありがとうございます。

>毎日精力的に
書くことがあったし、何せ「暇」でしたから(笑)今週からちょっと忙しいのでまた穴空きになるかもしれませんけどね~。それに、私は見たらぱっと書かないと忘れてしまうので(^_^;)
by Sardanapalus (2005-11-17 06:55) 

ティペット信者

ほとんどの作品は生演奏やCDで聞いてますけど、真夏の結婚のスタイルも好きですが後期のパズルのような訳分からないスタイルの作品がティペットの本領だと思います。90歳まで現役だったその作曲家は日本ではほとんど知られて無いのでだれか啓蒙してほしいな。
by ティペット信者 (2005-11-28 20:45) 

Sardanapalus

ティペット信者さん>
はじめまして!こんなマイナーオペラの記事にコメントありがとうございます!

>後期のパズルのような訳分からないスタイルの作品
ティペットについては全く初心者なので後期の作品がどんなものか想像もつきませんが、「真夏の結婚」はストーリーが分からなくても音楽だけ聴いていれば楽しめるのが素晴らしいと思います。

>日本ではほとんど知られて無い
私も恥ずかしながら今年のPROMSまで名前も聞いたことありませんでした。イギリス人でも知っている人は少ないと思います。一度でも聞いてみれば、ブリテンよりも遥かに聞きやすいしメロディもあって気に入ると思いますけどね!圧倒的に知名度が無いのがいけないのでしょう。
by Sardanapalus (2005-11-29 10:31) 

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