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オペラ「ドン・ジョバンニ」(3):マクヴィカーのジョバンニ像 [オペラ(実演)]

日本公演プログラム
天才演出家と言われている(らしい)デヴィッド・マクヴィカーの演出の魅力は色々ありますが、何よりも印象的なのは彼の演出するオペラの「物語としてのリアリティ」と「筋の通った解釈」だと思います。今回の「ドン・ジョバンニ」も例外ではありません。歌手達はただ綺麗にアリアを歌い上げる「歌手」ではなく、その登場人物としてステージに立ち、演じることを求められています。マクヴィカーは歌手達と一緒に演出をつけていくそうなので、運動神経のいいキーンリーサイドのようなタイプの歌手は正に理想的なプリンシパルでしょう。いくら演出とはいえ、ためらいも無くレポレッロの手にキスをしたり、ごろ~んと横になったまま歌ったり、全力疾走したり、激しい殺陣をこなしたり、軽々とジャンプしたり、なんて誰でも気軽にできることじゃありませんよね(^_^;)

Die Zauberflote (Dol)勿論、そこまでやらなくてもいい、という意見の方もいらっしゃるでしょうし、動きに意識が持っていかれてしまって歌を楽しめない、という不満も良く聞きます。解釈も癖があるし、とりあえず暗いし、ドラッグやらエログロやらの要素が出てくることも多くて、必ずしも誰にでも受け入れられやすい演出ではありません。このジョバンニも、ブリュッセルでの初演の時から賛否両論出ています。何でエルヴィーラはワインを飲みながら「静まっておくれ、私の心よ」と歌うのか、何でオッターヴィオはソロで踊らなきゃいけないのか、何で最後の夕食の場面でジョバンニはシャツ1枚に裸足なのか、何で騎士長はゾンビなのか、というようなよく分からない部分もあります。それでも人気は高くて、特にコヴェント・ガーデンでの演出作品は続々と映像化されています(先月NHKでも放送された「魔笛」←もマクヴィカー演出)。今シーズンは「フィガロの結婚」を演出しますし、正にロンドンでは一番の売れっ子演出家といえるでしょう。

そんなマクヴィカーの作り上げたジョバンニ像は、はっきり言ってサイコ体はしがらみと暗黙のルールが支配する貴族階級に属しながらも、彼の辞書には「常識」や「畏敬」という文字がありません。貴族階級に生まれた特権を最大限に活用し、自己の利益を追求することだけに命を燃やしている、名実ともに最低~な奴です。社会的にも宗教的にも共同体には参加していませんし、参加するつもりもありません。最期のシーンで騎士長への夕食を用意する時も、天に向かってパンを2つに割ってスープに浸した後十字をきり、ワインを掲げた後つばを吐いてますからね~。散々教えに背く行為をしてきて、今更悪びれることなく神の体と血を騎士長(ゾンビ)退治に使おうなんて、何と都合のいい奴!日本の神様達とは違って、キリスト教の神はそんなに寛大ではありません。こういう時に力を借りたかったら、常日頃からの信心が大切なんですよ、ジョバンニさん(^_^;)

ここまでジョバンニを「悪」として描ききった演出も珍しいかと思いますが、どうでしょう?個人的には、別にマフィアやら現代の不良青年やらに読み替えなくても斬新で魅力的な演出はできるんだよ~というお手本のような感じがしました。現在の読み替え演出ブームの中、こういった演出家がいてくれるのは本当に嬉しいです。

この演出について、もっと詳しく知りたいと思われる方は、流れを追って記事にしてくださっているShevaさんのシェヴァのバレエ鑑賞記へどうぞ!本当に細かくて、素晴らしい!の一言です。

「ドン・ジョバンニ」
初日(1) (2)  2日目(1) (2)


左が指揮者用
さて、歌手と演出について書きまくっていて音楽面を語っていませんが、大野和志の指揮はまずまずだったと思います。古楽器を取り入れた演奏、弾き振りのチェンバロ、適度なテンポ、どれをとっても舞台の進行の邪魔にならないものだったので、私は文句ありません。オペラで重要なのは舞台・歌手・指揮(オーケストラ)の相性だと思うのですが、今回の公演はこの3つのバランスが上手く取れていたと思います。舞台上に集中していたため、大野さんのチェンバロを演奏する姿が見れなくて残念といえば残念(笑)と、最後にとってつけたように書いてみました。正直言って、オペラは指揮についてあれこれと注文をつける方ではないのです(笑)大野さんの指揮、今度はモネ歌劇場で聞いてみたいですね。


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コメント 5

euridice

イギリスに戻られたんですね。お疲れさま。

>マクヴィカーの作り上げたジョバンニ像
あれからおよそ一週間、余韻を楽しみました。思い切って、行ってよかったです。Saldanapalusさんの後押しのお陰ですね。
by euridice (2005-10-11 07:51) 

ヴァラリン

お帰りなさい(というのも変ですね^^;)
暫くは時差ぼけがキツイでしょうけど、若いから大丈夫でしょうネ。

>マクヴィカー
って、あの【魔笛】もこのひとの演出だったんですね(^^;
(しょっちゅうお邪魔しているくせに、気がついてませんでした…^^;)

ところで、一つ質問です。
キーンリさんは今までに、インタビュー等で「ドン・ジョヴァンニ」という役柄についての解釈について、話していらっしゃらないのでしょうか?
落ち着かれたら是非、ブログで取り上げて欲しいです。ファン以外の方も、色々関心があることでしょう。
by ヴァラリン (2005-10-11 10:17) 

keyaki

お疲れさまです。
マクヴィカーのドン・ジョヴァンニに便乗して、記事を書きましたので、リンクとTBさせていただきました。
書いたのではなくて、インタビューの紹介ですが、なかなか面白いドン・ジョヴァンニ像ですので、長文ですが、ぜひ読んで下さいね。
by keyaki (2005-10-11 16:36) 

Sheva

私はお帰りなさいではなく、行ってらっしゃいですねえ~なぜかすごく淋しいです。今度はいつご帰朝ですか? 私の記事を丁寧にリンクしていただいて感謝感激です。私なんかオペラはトーシローですのに。ほんとに赤面です。
お待ちかねの新聞レビューが出ましたね。また出たらご連絡いたします。
by Sheva (2005-10-11 22:24) 

Sardanapalus

皆さんお気遣い&コメントありがとうございます!着いて早速イギリスの不便さに悪戦苦闘しているところですので嬉しいです~。体は元気でやってます。

euridiceさん>
>余韻を楽しみました
私なんかは暇があれば思い出して、色々と解釈してみたりしてました。ご紹介させていただいたオペラが「最悪!」ではなくて良かったです(^o^)

ヴァラリンさん>
>キーンリさん
>「ドン・ジョヴァンニ」という役柄についての解釈
いくつかのインタビューで語っているのを見たような気がしますので、探してみますね!少々お待ちください。ネタの提供ありがとうございます♪

keyakiさん>
>面白いドン・ジョヴァンニ像
ライモンディ氏の解釈、しっかり読ませていただきました。彼の3人の女性たちの解釈が興味深いですね!オッターヴィオはアンナにとって「男」じゃない、という意見には大賛成です!緊張感がないから彼のアリアはいつも眠くなっちゃうんですよね~。

Shevaさん>
>今度はいつ
おそらくお正月かと…。
>オペラはトーシロー
いえいえ、そんなこと言ったら私だってミーハーなオペラファンですよ(笑)新聞のレヴュー記事、お待ちしています!
by Sardanapalus (2005-10-11 23:22) 

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