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オペラ「ドン・ジョヴァンニ」@新国立劇場 [オペラ(実演)]

記事にするのが遅くなってしまいましたが、4月22日に新国立劇場で「ドン・ジョヴァンニ」を鑑賞してきました。新国立劇場も力を入れている公演で、特設サイトもあります。何を隠そう、これが新国デビューの私。劇場オタクとしては、オペラ以外にも駅からのアクセス、ロビーや階段、劇場内の装飾から座席や音響、ステージの広さまで何もかも気になるので、開演前からあちこち見て回りました。オペラ劇場の印象としては、皆さんの評判通りちょうどいいサイズの客席数でオペラを見るにはとてもいい環境だと思います。音響は少しデッド(残響が少ない)に感じましたが、座る場所によって印象が変わるかもしれません。座席は快適でしたし、1階席にかなり傾斜がついているのも◎。ロビーも十分な広さがありますし、他に東京でオペラ上演を行う東京文化会館やNHKホールとは比べものにならない快適さです。上京する費用とチケット代を考えてしまうとなかなか行けないのですが、またぜひ訪れたい劇場です。次はオペラだけでなく中劇場・小劇場にも行ってみたいですね。

さて、「ドン・ジョヴァンニ」の公演自体はどうだったかというと、正にマリウシュ・クヴィエチェン(Mariusz Kwiecien)を堪能した舞台、という一言につきます。2002年の小澤征爾音楽塾の公演で聞いた時は「このイケメンバリトンは誰!?」と必死でネット検索したものですが(^^)、今や押しも押されぬスター歌手の一人ですね。今回のジョヴァンニは性格付けも声の表現力も10年前と比べて更に魅力的になり、演技に余裕も感じさせる堂々とした歌いっぷりでした。ただ、共演の歌手、特にエルヴィーラやツェルリーナとのからみの部分で力をセーブしている様子が感じられてもどかしかったです。一人きりの場面や最期の場面ではギアを入れ替えた歌唱をきかせてくれていたので、全編このレベルで聞きたかった…。レポレッロ役の平野和はキーチェンのジョヴァンニによくついて行っていたと思います。舞台映えもするし、演技もうまいですしね。(フォルクスオーパーの専属歌手だそうですので、ダニロなんかぜひやってほしいです。)低音までしっかり出るのも好印象なので、もう少ししたたかさもある役作りをしてもらえると、より魅力的になると思いました。騎士長の妻屋秀和は、相変わらず威厳ある低音を堪能させてもらいました。マゼットを歌ったのは久保和範でしたが、可もなく不可もなくという印象でした。農夫とはいえあまりにもイモ兄ちゃんすぎて、もう少しピリッとした部分も見せて欲しかったです。男声陣で、というか今回の公演で一番がっかりだったのはドン・オッターヴィオのダニール・シュトーダ(Daniil Shtoda)。映像で見ても「う~ん」でしたが、実演で聞いたらもっと「う~~~ん」でした。音程はあっているのですが、とにかく声のボリュームが小さくて、重唱部分では全く聞こえてこないです。1階席11列目ですらそんな聞こえ方だったので、最上階奥まで届かないのではないか、とアリアを聴きながら心配になってしまったほどです。他の方の鑑賞記を読むと、この日の歌唱はまだましな方だったようなのですが、オッターヴィオのアリアは私にとっては絶好の睡眠タイムになってしまいました。

女声陣は、皆さんそれぞれの歌唱はいいのですが統一感があまり感じられず、アンサンブルでも各自が自分の世界で歌っていたのが残念です。ドンナ・アンナとしてはちょっと声が太めのアガ・ミコライ(Aga Mikolaj)ですが、オッターヴィオを尻に敷いている様子が伺える強気な性格付けがちょっと面白かったです。この前「ドン・ジョヴァンニ」を観た時はアンナ役の歌手が不調だったので、ミコライの歌唱で口直しならぬ耳直しができました。エルヴィーラを歌ったニコル・キャベル(Nicole Cabell)は評判のいい若手なので期待していたのですが、こじんまりとした演技と歌唱でちょっと期待はずれでした。彼女の声質も、あまり役柄に合っていないような…エルヴィーラなのに分別がありそうだったのもちょっと違うな、と思ってしまった点です。あのジョヴァンニを手こずらせる訳ですから、もっとごりごりと押しの強い性格でないとダメでしょう!九嶋香奈枝はしっかり者のツェルリーナでしたが、後半のアリアにはちょっとひやひやさせられました。

新国の演出は舞台をヴェネツィアに移していること以外はかなり正統派で、衣装や舞台デザインは整っていましたが動きが少なめで退屈に感じる部分もありました。折角ヴェネツィアなんだから、ジョヴァンニのセレナードはゴンドラに乗って歌ってくれてもいいのになぁ~などと思ってしまったり…。あまりヘンテコな読み替えはやめてほしいですが、突っ立ち歌唱が続く演出も、それはそれで退屈してしまいます。折角レチタティーヴォの多い「ドン・ジョヴァンニ」ですから、そのバランスをうまくとって演劇的要素も取り入れるのが演出家の腕の見せ所だと思うのですが、なかなか難しいものですね。

そんな感じで、個々の要素としては演出も指揮も歌手も合唱も悪くなかったのですが、逆に言えば突出して素晴らしいともいえなかった、私には中庸な感が否めない公演でした。もっと完成度の高い上演ができそうなのに、その手前で空中分解してしまっていて勿体ないですね。これは、再演演出家の技量の問題か、歌手達の気合いと歩み寄りが足りないのか、指揮者と歌手の意思疎通が上手くいっていないのか、何が原因なのか分かりませんが、この「あと少し」物足りない感じが解消されれば、もっと新国立劇場にも足を運びたくなると思うので、新国さんよろしくお願いしますね~。
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コメント 4

galahad

新国立劇場は劇場としては良い建物だと思いますが、時々音響操作に疑問があることはあります。 2階、3階のサイドはかなりいいかんじですが、なかなか当たらないです。 
私もそんなに多くここで観ているわけではありませんが、うんといい演奏の時もありますよ〜。
演劇のほうもかなり人気があるようですから(私は行ったことないですが)ぜひお出かけくださいな。
オペラ公演のほうは来シーズンはそう行くものもないか、と思ってますけど。
by galahad (2012-04-30 21:57) 

keyaki

やっと新国デビューだったんですね。

>1階席11列目
ちょうどいい席ですね。

クヴィエチェンのドン・ジョヴァンニは、オーラはないけど、すっごくよかった.....

プレミエはドンナ・アンナがモシュクで、アガ・ミコライがドンナ・エルヴィーラだったんですが、アガ・ミコライのドンナ・エルヴィーラは、強気な感じで黙役の侍女と印象的なコンビでした。

シュトーダは、来日公演の「ファルスタッフ」でひとり浮いていたので注目しましたけど、2006年からぜんぜん成長していない...

私の鑑賞記録をTBしますのでよろしくお願いします。



by keyaki (2012-04-30 22:58) 

Sardanapalus

galahadさん>
日本人でオペラを楽しんでいる者としてはやはり外せない新国立劇場ですから、今回遅ればせながら劇場デビューできてよかったです。

>時々音響操作に疑問がある
今回が初めてなのでどんな音響でも新鮮だったと思いますが、なかなか癖のある音響に感じました。公演によっては上手くPAにバランスを取ってもらう必要がありそうですね。次回はどんな印象を受けるか、ちょっと楽しみだったりします(^^)

>演劇のほう
そうなんですよ。ときどきNHKで録画放送してくれるのを観ています。委託作品の公演も質が高いものが多いようで、いつかオペラとはしごできたらいいなぁ、とかこっそり考えてます。
by Sardanapalus (2012-04-30 23:21) 

Sardanapalus

keyakiさん>
>やっと新国デビュー
そうなんです。上京するお金とホテル代とかを考えてしまってなかなか手が出なかったのですが、今回は日曜マチネでチケットも直前まで余っていて日帰りできたので、ようやく見に行くことができました。

>アガ・ミコライのドンナ・エルヴィーラは、強気な感じで黙役の侍女と印象的なコンビ
彼女の声質や雰囲気からすると、きっとエルヴィーラの方が好印象だったと思います。キャベルと逆の配役だったら違和感とか少なかったのかしら?シュトーダは、映像でもパッとしない印象だったのがますますパッとしなかったです。TBありがとうございました。
by Sardanapalus (2012-04-30 23:27) 

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