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オペラ「椿姫」@神奈川県民ホール② [オペラ(実演)]

①では主役の3人のことを記事にしましたので、今回は②としてROH来日公演の「椿姫(La Traviata)」のその他の歌手、オーケストラ、演出などについて書いていきたいと思います。

まず、プリンシパル以外の歌手陣ですが、流石ロイヤル・オペラといった表現がぴったりくる、演技も出来る手堅い歌手が揃っていたと思います。ガストン子爵を歌ったパク・ジミン(Ji-Min Park)は演技がノリノリすぎて脇役としてはちょっと浮きすぎでしたが、相変わらずいい声していますね。ドビニー侯爵役のリン・チャンガン(Changhan Lim)も、歌うのはほんの少しですが存在感があったと思います。2人ともオペラハウスのヤング・アーティストとして脇役で出演していたのを何度も聞いているので、久しぶりに元気そうな姿を見られて良かったです(^^)アンニーナもグランヴィル医師も、それからコーラスのひとりひとりが気を抜かない演技で、公演全体を盛り上げていたと思います。

期待していたアントニオ・パッパーノ(Antonio Pappano)の指揮は、ちょっと本領発揮とはいかなかったようです。特に1幕は不調のヤオに合わせながらの苦心の指揮でしたので、いつものテンポのよさや輝かしさがなかったですね。2幕以降は次第に調子を取り戻していましたが、絶好調の時には煩いうなり声やら歌声やらが今回はあまり聞こえなかったので、本人としてもイマイチな出来だったのでしょう。オケ自体は、普段のロンドンでの公演よりもミスは少なかったと思います。やればできるじゃないの(^^)

そして、やっぱりこのリチャード・エア(Richard Eyre)の演出は細かいところまで破綻なくしっかり描かれているという点で、改めて白眉の演出だと思いました。映像でも実演でも、このエアの演出以上に説得力と構成力をもつものは今まで見たことがありません。1幕のヴィオレッタのサロンのシャンパンクーラーの氷の彫像といい、ヴィオレッタのエリザベート風ドレスの美しさといい、一気に18世紀のパリに連れて行ってくれますよね。ここのフローラの赤いドレスも好きです(^^)2幕のセットも、まだ壁紙のサンプルが並ぶ壁や床に置かれたままの数々の絵画など、新しい住居を2人でじっくり丁寧に作っている様子が容易にに想像できます。ヴィオレッタの手紙を持ってくるのが農夫と幼い娘というのもとても現実味があって気に入っている点です。この女の子へのアルフレードの優しい対応を見せることで、この後のヴィオレッタを侮辱する行為の異常さが際立ってきます。また、第3幕でのヴィオレッタの最期までかいがいしく世話をしてくれるアンニーナの性格付けも好きな点です。ヴィオレッタの枕とアンニーナのエプロンに染み付いた血で、ヴィオレッタの容態が深刻であることを暗に示す手法も上手いです。そして最期に「元気になった」と部屋を走り回るヴィオレッタが、アルフレードの胸に戻ってくる直前に絶命し、そのままアルフレードが抱え込むと言う終わり方も、ドラマティックで大好きです。この演出でなかったら、この日の感想はもっと厳しい評価になっていたことでしょう。

そんな感じで、期待が大きかったせいもありますが、高いチケット代を払う価値がある公演だったかどうか、ときかれれば答えはNOです。演出は素晴らしいですがオケピと舞台on舞台との距離も離れていて一体感がなく、ヴィオレッタは途中で交代しアルフレードは冴えない、という状態ではキーンリーサイドとペレスの頑張りを差し引いてもオペラとしての出来はいいとこ70点くらいでしょう。これからまだ東京公演が残っていますから、ぜひ立て直してこれぞロイヤル・オペラ!と思わせる演奏を日本のファンに聞かせて欲しいと思います。

公演後はステージドアでオフ会の待ち合わせをしながら出待ちをしました。キーンリーサイドが最初に登場して70名ほどのオペラファンたちに丁寧にサインしているところにペレスが登場した時には、「アイリーン!」「アイリーン!」の大騒ぎとなり、もみくちゃにされてしまいました~。いやー、凄かったです!ペレスと並んでサインをするキーンリーサイドも、「そう、アイリーン素晴らしかったよ!」と声をかけていました。公演後にパーティーがあったため皆急いでいる中、最後までにこやかに、丁寧にファンに応えていたのはパッパーノ。こういう人だからスタッフやコーラス、オケメンバーから好かれるんでしょうね。



16日のNHKホール初日は、ヤオが通しで歌ったそうですね。第1幕は不安な部分もあったそうですが、第3幕は大変素晴らしく、カーテンコールでは大喝采だったとのこと。何とかアレルギー症状も治まってきた様子でよかったです。しかも、彼女のヴィオレッタに対してはキーンリーサイドがずっと嫌味な親父だった、というShevaさんの感想を読んで、当然ながら横浜とは違う演技をしたんだ~(ペレスは結構可愛らしい素直なヴィオレッタだったので、親父の態度も途中で軟化していました)と、俄然興味が沸いてきました!!…ので、ついつい安く出ていた22日の東京公演千秋楽のチケットも買ってしまいました(^_^;)ま、まあ三度目の正直でまともな「椿姫」が見れるはず、と期待しておきましょう。これでしばらくは緊縮財政です、トホホ。
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sora

Sardanapalus様
こちらでは初めまして。
madokakipさんのところで、ぐちぐちとお見苦しい感想ばかり書いていましたが、どうぞお怒りにならないで下さいね。
私にもやっぱり一応好みがあるみたいです。
満足いく公演とそうでないものと、きっと些細な差で決まってしまう場合も多くあるのだと思います。なかなか難しいですね。
でも、私が涙がでちゃうのは本当に単純なものです。お涙頂戴映画やテレビで浅いと思いつつも泣いてしまいますし。。。

初日はもう色々あって本当に微妙な公演でしたよね。
県民ホール、滅多に行かないホールですけど、あんまり良くないんですかね?
浅くて横広のピットで、個々の音が結構目立つんですよね。ちょっと粗かったかな。。。
しかしあの日は暑かったですよね。生ビール飲んで帰りました☆

キーンリサイドはジェルモンではどうしても違和感がありましたので、別の役で聴きたいです。
by sora (2010-09-19 01:43) 

Sardanapalus

soraさん>
こちらにもわざわざコメントいただき、ありがとうございます!芸術に対する好みは本当に人それぞれですので、こうして大勢の方が盛り上がっているとちょっと取り残されてしまった感があるかと思いますが、そこは「ふーん、そういう見方もあるのね」と参考程度に考えておいてくださ~い。ロイヤルオペラはあまり好みじゃなかったとしても、この先も様々な歌劇場の来日公演が来ますから、次のオペラ公演を楽しみにしてくださいね。あ、でもその前に「マノン」でしたっけ?皆様の評判から考えても大丈夫だとは思いますが、今度はパッパーノの指揮も違和感少なく楽しめるように祈っています。チケット代もばかになりませんものね。

>満足いく公演とそうでないものと、きっと些細な差で決まってしまう
これは本当にそう思います。その日の自分の体調にもよりますし、演奏のタイミングもちょっとずれるだけで印象が大きく変わりますし。

>県民ホール、滅多に行かないホールですけど、あんまり良くないんですかね?
私は初体験でしたけど、音響についてはあまりいい印象を受けませんでした。東京周辺の劇場って、古いからか音響の印象がよくないところが多いです。この点では、地方の方が建物が新しいので優れていますね。私が行った中ではびわ湖ホールや愛知県芸術劇場や兵庫県立芸術文化センターなんかは世界基準で考えても良いホールだと思います。

>キーンリサイドはジェルモンではどうしても違和感
それこそハムレットとか、モーツァルトのバリトン役などのもう少し若い役がいいですね(^^)
by Sardanapalus (2010-09-19 11:01) 

しんしん

こんにちは! 「椿姫」12日&19日行ってまいりまして、なんと運悪く、代役の代役×二連発くらってしまいました。 今日もヤオは絶不調、またまた第一幕のあと交代です。本当にアレルギーなの?確信犯では? 初日とちがい、交代アナウンスに対してさすがにブーイングがでました。どうせなら最初からペレスに出演させればいいのにと思うのですが。。。 このぶんだと22日ネトレプコ出演の可能性大ですね!
バカ高いチケット代を考えると(考えちゃいけないと自分に言いきかせつつも、新国の二倍ですもんね・・・) パパ・ジェルモンに「泣きなさい~~」と歌われて、もう、泣きたいのは観客ですワ!今回まともに「歌」を聞かせてくれたのはキーンリーサイドとコーラスだけって?
今日のキーンリーサイドは杖をほとんど手放さず(リゴレット歩きはやめたようです)、動きもゆったりとして、自然な中年の雰囲気がただよっていました。この容姿のまま「ばらの騎士」のファニナルでもいいかも、と思いました。 眼鏡もお似合いで、やっぱり、いつもかっこいいです!
by しんしん (2010-09-19 22:23) 

Sardanapalus

しんしんさん>
こんばんは!19日のレポートありがとうございます。…が、何と何と、またもやヤオは途中交代ですか!!!はぁ~、連続でこの仕打ちとは、心中お察しします。ブーイングも当然でしょう。一応NBSのブログにも今日の交代のことがアップされていますね。
http://www.nbs.or.jp/blog/roh2010/contents/2010/09/919.html

>パパ・ジェルモンに「泣きなさい~~」と歌われて、もう、泣きたいのは観客ですワ!
本当ですね!終演後にパッパーノの伴奏でキーンリーサイドのリサイタルでもしてもらわないと元が取れないですよね!「椿姫」はヴィオレッタが駄目だと楽しめませんから、22日は噂のネトレプコでないなら最初からペレスでお願いしたいです。

>今日のキーンリーサイドは杖をほとんど手放さず(リゴレット歩きはやめたようです)、動きもゆったりとして、自然な中年の雰囲気
おお~、改善されているんですね。さすがはキーンリーサイド。これは最終日の演技を見るのが楽しみです☆
by Sardanapalus (2010-09-20 00:08) 

Terlina

初めまして。いつも興味深く読ませていただいてます。私も19日に行ってきました。椿姫で泣けなかったのは初めてです。物語に没入出来なかった。

でもキーンリーサイドは素晴らしい。2階の後方席で言葉がはっきり聞き取れたのは彼だけでした。パパジェルモンがヴィオレッタを理解し、心を通わせていく話かと思ってしまいました。特に2幕の大合唱ではアルフレードの存在が眼中になくなってしまいましたよ。

出待ちで、サインと握手をして頂いたのですが初なまキーンリーサイドのあまりの素敵さに胸がいっぱいで、ありがとうの一言すら言えないでしまいました。失礼なファンとか思われなかったかと心配・・・

ところで楽屋から出てきたキーンリーサイド、傘持ってたんです。しかもコンビニとかで売ってるあのビニール傘!もちろん19日の天候は晴れ。何だったんでしょう?
by Terlina (2010-09-20 20:51) 

momo

>この女の子へのアルフレードの優しい対応

16日はアルフレードはそのあたりに散らばってる白い花(椿を活けてたのをヴィオレッタが「怒って」ばらまいた←ホントに絶望とか何とかよりパパジェルモンにヤオが「怒った」^0^)をひらって優しく手渡してたんです。でも私は ポケットから小銭を出して、、、というのが普通の反応かな?と思ったんですが、、。

Sardanapalus さんが‘優しい’と仰ってるのは召使いに事務的に接する(=チップを渡す)んじゃなくて対等な関係のように花を渡したのを指してらっしゃるのかしら?多分小銭の方が喜ばれたかも、、、と考える私は即物的な人間(^0^;;)。


by momo (2010-09-21 10:04) 

Sardanapalus

Terlinaさん>
折角舞台を見に行っているのに感動できないって、本当に残念ですよね。

>パパジェルモンがヴィオレッタを理解し、心を通わせていく話かと思ってしまいました。
いいですね、そんなオペラあったらぜひ見てみたいです(^^)そういえば今回のキャストだとアルフレードの存在感がほとんどないですから、どうしてもヴィオレッタとパパ・ジェルモンのパートがぐぐっと前にでてきてしまうかもしれませんね。

>楽屋から出てきたキーンリーサイド、傘持ってたんです。
な、なぜでしょうね!?いつもちょっと不思議君なので正解かどうかは分かりませんが、足を痛めていたようなので、杖代わりでしょうか?
by Sardanapalus (2010-09-22 01:04) 

Sardanapalus

momoさん>
>この女の子へのアルフレードの優しい対応
あ、これはですね、まだ冷静なアルフレードが、下層階級の農夫の少女に対しても、感謝の気持ちを込めて花を渡すという上流階級社会のルールに沿った行動をきちんととっているのが、この後のヴィオレッタへの振る舞いと好対照だな~と思うのです。現金の方が父親は嬉しいかもしれませんが、花を渡す行為がロマンチックじゃないかと(^^)
by Sardanapalus (2010-09-22 01:14) 

terlina

>杖がわりでしょうか?
普通に歩いておられる気がしたので思いもよりませんでしたが、そうかもしれませんね。パパジェルモンでよかった。足が悪くても違和感ない役ですから。

杖代わりにビニール傘。さすがです。
by terlina (2010-09-22 09:01) 

Sardanapalus

terlinaさん>
>普通に歩いておられる気がしたので思いもよりませんでしたが、そうかもしれませんね。
何年か前も、酷く捻挫して医者に松葉杖を使えと言われたときも、少し良くなったら松葉杖を脇に抱えてすたすた歩いていたというファン情報がありますから(笑)段差の上り下りの時だけ杖代わりに使っていたとか?いずれにしても用途は想像でしかないですから、ビニール傘の怪、ですね!
by Sardanapalus (2010-09-23 21:32) 

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